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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

原因のさぐり方

2015.08.28何度も流産してしまう不育症ってなに?原因と治療法は?

答えてくださった先生は・・・
濱口元昭先生
ヨナハ産婦人科小児科病院 院長/医学博士
はまぐち・もとあき
1985年3月、三重大学医学部卒業。卒業後は、三重大学医学部附属病院にて不妊治療に携わる。1990年3月、三重大学大学院を卒業。1992年、同附属病院・不妊症治療チーフに。1994年、ヨナハ総合病院入職。1997年、星見ヶ丘クリニック院長。2011年1月、ヨナハクリニック院長に就任(2013年1月、ヨナハ産婦人科小児科病院に改称)。卵から周産期、乳幼児期、児童期までの一貫した医療と母子へのサポート体制(サークル活動や研究会)で、地域の人々から厚い信頼を受けている。
不育症の多くは、胎児の染色体異常や血液の異常が関係している

せっかく妊娠しても、流産や死産、新生児死亡などを繰り返し、子どもをもてないことを不育症と呼びます。
一般的には、2回流産・死産を繰り返した場合には不育症を疑い、検査などを行います。
習慣性流産とほぼ同じ意味ですが、習慣性流産には、妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれず、不育症のほうがより広い意味で用いられています。
まだまだ分からないことの多い不育症ですが、現在判明している原因と治療方法について、濱口院長にお話を伺いました。

不妊症と不育症の境目は、胎のうの確認前後

2回以上流産を繰り返す場合は検査を受けてみることが大切。
原因には、胎児の染色体異常や感染症、血液の凝固異常などがある。

流産・死産を繰り返している患者さんが受診された場合、まずは「どんな流産・死産だったのか」よくお話しを伺います。

その上で、2回流産を繰り返している場合には、一度、検査を受けられたほうがいいとお伝えします。

不育症の原因はまだよくわかっていないことも多いのですが、現在考えられている原因には次のようなものがあります。

 

まず考えられるが、胎児の染色体異常です。

胎児に異常がある場合には、流産する率が高まります。

これは卵子の老化によるものが多いとされています。

さらに、お母さんが伝染性紅斑やインフルエンザなどの感染症にかかった場合です。

これら感染症にかかると流産発生率が高まります。

 

またご夫婦どちらか、またはご夫婦ともに染色体異常(転座※)があると、卵子や精子を作る際に染色体に過不足が生じ、結果として習慣性流産を起こしやすいとされます。

不育症について深刻に悩まれている場合には、ご夫婦で染色体検査を受けてみることも選択肢のひとつかもしれません。

 

そして「高リン脂質抗体症状群」とよばれる自己免疫疾患があります。

血液中に高リン脂質抗体とよばれる自己抗体ができることで、血液が凝固しやすく(固まりやすく)なり、結果として胎盤の血流が悪くなったり、絨毛(胎盤)が傷つけられたりして流産しやすくなると考えられています。

同じように血液が凝固しやすくなる病気には、第XII因子欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症があり、不育症のリスク因子になっているのでは?と考えられています。

 

一方、まだ不育症との因果関係ははっきりわかっていませんが、甲状腺機能異常や糖尿病などの内科的疾患がある場合も、不育症を起こす要因になり得るとされています。

そして母親が高齢だとどうしても流産発生率は高くなります。

40~44歳では40%、45歳以上では50%です。35~39歳では25%ですので、お母さんの年齢が高くなるほど、流産の大きな原因になり得ることがわかります。

※染色体の一部・または全部がちぎれていたり、他の染色体に結合した状態のこと

 

不育症とされるのは、5週ごろに胎のうが確認された以降のことで、胎のうが見えるまでは不妊症の領域となる。

不妊症なのか、不育症なのかの境目は、5週0日ごろに胎のうが見えたときとなります。

胎のうが見える以前は不妊症の領域、以後は不育症の領域とされます。

妊娠継続のスケジュールに沿って、流産を起こしやすい原因とその対処法をみていきます。

 

【不妊症の領域】
2週5日ごろに受精卵は胚盤胞になります。

黄体機能不全が疑われる場合には、妊娠継続を助けるために黄体ホルモン補充療法を行います。(体外受精をおこなった場合には、採卵時に黄体ホルモンの産生場所も一緒に吸い出してしまうため、ほぼ全員に黄体ホルモン補充療法を行います)

3週5日ごろから、早い方では妊娠検査薬などで妊娠反応が出始めますが、1週間ほどで反応が消えてしまうことがあります。

これは「生化学的妊娠」(一般的には化学的流産と呼ばれる)であり、健康な若いカップルでも30~40%という高い確率で起こります。

自然淘汰のひとつであり、日本産科婦人科学会の定義では、流産の回数には含めないことが決められています。

 

【不育症の領域】
5週0日ごろ胎のうが確認され、6~7週で心臓の拍動が見られます。

8週になると胎児は15ミリを超え、10週で3センチくらいまで育つと、出産に至る確率は99.9%となります。

18~20週手前では、臍帯因子により子宮内胎児死亡が起こることがあります。

臍帯因子とは“へそのお”によるトラブルが起こることで、へそのおが子宮の辺縁(はしっこ)から出ていたり、赤ちゃんの側のへその緒が細くなっていたり、詰まったりということが原因で胎児死亡が起こることがあります。

何度も続く場合には、血液凝固系の検査をしてみる必要があります。

 

そして12~18週ごろに起きやすいのは、子宮頸管無力症です。

陣痛時でもないのに子宮頸管(子宮口)が開いてしまうことで、流産や早産の原因になります。

不妊治療を始めるときに卵管造影検査を行うことが多いと思いますが、造影剤を注入するとすぽっと子宮内のバルーンが抜けてしまうことがあります。

これは子宮頸管の力が弱いために抜けてしまうのです。

子宮頸管無力症が疑われる場合には、妊娠初期~中期のうちに子宮頸管を糸かテープで縫い縮めておき、流産・早産するのを予防することが大切です。
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血栓症と血液凝固異常には、予防のために32週ごろまでアスピリンを服用。
胎児の染色体異常は、最近の研究で原因が判明。将来は解決できるように!?

アスピリンというと「解熱鎮痛剤」というイメージがあるかもしれませんが、実は低用量で使用すると、血液をさらさらにして固まりにくくする作用があります。

なんの問題のない女性でも、妊娠すると血栓症の発症率は1万人あたり5~20人となります。

妊娠していない女性の発症率は1万人あたり1~5人ですから、妊娠するだけで血栓症の発症リスクが高まります。

 

そして先ほどもご説明したとおり、不育症の原因のひとつに血液が固まりやすくなってしまう血液凝固異常があります。

こうした血液が固まりやすくなってしまう症状を防ぐために、妊娠がわかった時点で低用量のアスピリンの服用を始め、32週ごろまで続けます。

アスピリンは安価で、かつ安全性の高い薬ですから、妊娠中でも安心して服用することができます。

 

そして胎児の染色体異常による流産ですが、どうして加齢により卵子の染色体異常が起きてしまうのかが、最近国内の研究グループにより解明されました。

卵子が細胞分裂をするときに、染色体がうまく分かれなかったことが原因だとされ、実験では、一部の染色体がほかの染色体より早く分かれる異常がみられました。

染色体を結びつける役割を果たしているのは「コヒーシン」というタンパク質で、この物質が年齢とともに足りなくなり、うまく染色体が分かれないのではないかとされています。

将来、この「コヒーシン」という物質の減少を防ぐ方法が開発されれば、高齢になっても、卵子の染色体異常のリスクを低減できるようになるかもしれません。

 

不妊症の患者さんを診察していると、みなさん妊娠することがとても難しいことだと思っていらっしゃいます。

しかし、30代で一般不妊レベルの方なら、3カ月でおよそ3割の方が妊娠されます。

最近のご夫婦はセックスレスの場合も多く、性交渉の少なさが妊娠しにくさにつながっているのかもしれません。

 

また“子育ては妊娠中から始まる”といわれますから、お母さんの体作りも大切です。

初診の際、肥満にともなう糖尿病でひっかかる方が年間4~5人はいらっしゃいます。

BMIが25を超えている場合は、“まごわやさしい”と表現されるような食生活に改善しつつ、肥満を解消して体調を整えることが重要です。

 

そして近年、AMHの値を調べることで卵巣予備能(卵巣にどのくらい卵子のもととなる細胞が残っているか)が分かるようになりました。

しかし早発閉経と診断された患者さんでも、当クリニックでは30~40人ほど出産に至っておられます。

卵巣予備能が低く妊娠が難しいとされた場合でも、一度ご相談にいらしてほしいと思います。

 

不育症についても、近年はさまざまなことがわかってきており、流産を防ぐための対策をとることも可能です。

私たちは、不妊・不育症治療はもちろん、それ以降も、患者さんにずっと寄り添える存在でありたいと思っています。

赤ちゃんをお迎えできるよう、一緒にがんばっていきましょう!
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取材・文/渡邉優希

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施設名 ヨナハ産婦人科小児科病院(ヨナハサンフジンカショウニカビョウイン)
診療科目 産婦人科・小児科
電話 0594-27-1703
所在地 〒511-0838
三重県桑名市和泉イノ割219
最寄駅 近鉄名古屋線・JR関西線「桑名駅」下車。
桑名駅前バスターミナルより「日の出橋」もしくは「ヨナハ総合病院前」行きに乗車。
または、桑名市コミュニティバス乗り場より、南部ルート乗車で「ヨナハ総合病院前」停下車。
URL http://www.yonaha.jp/yonacli/

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