トップページ  >  女性と子どもの健康コーナー ここからげんき  >  赤ちゃんを迎えたいあなたに!妊活・不妊対策を始めよう  >  治療最前線の名医に聞く!不妊治療 Q&A  >  原因のさぐり方  >  不妊検査ってどういうもの? 結果の見方やその後の治療法は?

治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

原因のさぐり方

2015.11.26不妊検査ってどういうもの? 結果の見方やその後の治療法は?

答えてくださった先生は・・・
小林淳一先生
神奈川レディースクリニック院長/医学博士
こばやし・じゅんいち
1981年、慶應義塾大学医学部を卒業。1984年より習慣流産の研究と診療に携わり、1988年、医学博士号を取得(学位論文のテーマは習慣流産の夫リンパ球免疫治療)。1989年、済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に取り入れる。その後、新横浜母と子の病院において、不妊・不育・IVFセンター長として診療に携わる。2003年、神奈川レディースクリニックを開設。患者さん一人ひとりのペースに合わせた治療と相談のしやすさで、患者さんからの信頼も厚い。現在は、着床不全・超初期流産に対しての習慣流産の検査治療も行っている。
まずは検査をすることで、いかに早く妊娠できるか?を探る

なかなか子どもが授からず、不妊治療を行っている医療機関を受診すると、原因を調べるために検査を受けることになります。どんな検査をするかは、事前の説明などである程度把握することができるかもしれません。 しかし、検査結果をどのように見たらいいのか、結果が良くなかった場合には、どんな治療が必要になってくるのかは、分かりづらく、不安に思うことも多いのではないでしょうか。 そこで今回は、検査結果の見方とその後の治療について、小林院長にお話を伺いました。

ホルモン値は、体調やストレス、時間帯により変動する

検査結果は、見方が難しい場合も。疑問点はドクターやスタッフに尋ね、十分に納得した上で、治療のスタートを!

■ホルモン検査
不妊症のホルモン検査は、生理周期に合わせて行うものがあります。

ホルモン値は、そのときどきの体調やストレス、時間帯などにより変動しますので、項目によっては何度も測ります。

【卵巣の状況】を見るには、生理中(3日目ごろ)にFSHとLH※を測ります。数値としてはどちらも9mIU/ml以下(一桁)が理想とされています。FSHは15〜20mIU/mlを超えると卵巣機能の低下が考えられます。(治療をどのくらい急いだ方がいいかは、FSH値、胞状卵胞数/AF、超音波検査所見の3つを参考にして判断します)

 

またLHの値がFSHより高い場合には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を始めとした排卵障害の可能性があるため治療が必要です。

卵巣機能の低下がある場合には、少量のエストロゲン製剤(プレマリンなど)や、DHEAというサプリメントの服用をしていきます。DHEAは性ホルモンの前駆体(材料)で、飲むことにより体内でエストラジオール(女性ホルモン)など に変換され、卵巣機能を改善させる効果があるとされています。

 

そして【卵子の成熟度】を調べるために、排卵期にはE2(エストラジオール・卵胞ホルモン)の値を測ります。

排卵時における成熟卵胞のE2は、1個につきおよそ200pg/ml前後が理想とされています。また生理中のE2値が80pg/mlを超える場合には、前周期に排卵せず残った卵胞(遺残卵胞)がある可能性を疑います。

もし遺残卵胞が3カ月を越えても残っている場合には、血流が悪くなって排卵障害を招く恐れがありますので、局所麻酔をかけた上、注射器で遺残卵胞を吸い出す処置を行います。

 

また高温期(黄体期)には、【黄体機能】を調べるために、P4(プロゲステロン・黄体ホルモン)の値を測ります。

このホルモンは受精卵の子宮内膜への着床や、妊娠の維持に重要な役割を果たします。P4が10ng/mlを下回る場合には黄体機能不全を疑います。

しかしP4の値について、過度に心配する必要はありません。良い卵ができれば、黄体ホルモンは自然に分泌されるからです。まずはちゃんとした排卵をする治療を行い、その上で必要な場合は黄体ホルモンの補充を行います。

※FSHとLH・・・この2つのホルモンは、排卵に大きな役割をはたしています。排卵のしくみは、まず脳の視床下部が下垂体に「FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を分泌せよ!」と命令(GnRH:ゴナドトロピン放出ホルモン)を出します。すると下垂体からFSHとLH(この2つを称してゴナドトロピンという)が分泌され、“卵を育ててください”と卵巣に指令が出されます。そのため、卵巣自体が弱っていてなかなか排卵しないと、「もっと卵を育ててください!」という命令(GnRH)が過剰に出されるため、FSHとLHの値が高くなってしまうのです。

 

■プロラクチン検査
プロラクチン(PRL)とは、脳下垂体から分泌される乳汁分泌ホルモンのことです。

出産後は、このホルモンが高値となることで、おっぱい(乳汁)がたくさん分泌されますし、出産後すぐに妊娠することを防ぐために排卵を抑制します。

妊娠・出産していない時にプロラクチンの値が高くなることを「高プロラクチン血症」といい、排卵障害を起こしたり、流産を誘発したりするといわれています。最近の研究では、着床に関係するともいわれています。

 

プロラクチンは、夜中や明け方に高くなることが多く、通院時(日中や夕方)には正常値に戻ることもあります(潜在性高プロラクチン血症)。また過度なストレスや乳頭刺激でも高くなり(生理的高プロラクチン血症)、その他、胃腸薬や向精神薬の服用でも高くなること(薬剤性高プロラクチン血症)もあります。

治療は、プロラクチンの値が軽度の上昇で、排卵障害や着床障害などが考えられる場合には、カバサールという薬を週に1度服用して経過観察をしていきます。また50ng/ml以上の場合には、下垂体腫瘍の精密検査をすることもあります。

 

■AMH検査
AMH値は、卵巣に残っている卵胞の赤ちゃん(胞状卵胞の前段階)の数を反映するとされており、“卵巣内にどれくらいの卵の数が残っているか”を予想することができます。

これはあくまでも“数”であって、卵の“質”とは関係がありません。

 

実際、AMHの値が1.0ng/ml以下の方でも、タイミング療法や人工授精で妊娠に至っている方もいらっしゃいます。

ですから、AMHの値が低い=すぐに体外受精しなきゃ!というわけではありません。一方で年齢が高く、AMHが低い方に関しては、なるべく早目に人工授精や体外受精へステップアップをしていきます。

検査は血液検査により行われ、生理周期に関係なく、いつでも採血することが可能です。

 

■クラミジア感染症、抗原・抗体検査
クラミジア感染症は、性交渉によって尿道や子宮頚管に「クラミジア・トラコマティス」という細菌が感染することで発症します。

クラミジアに感染すると、「子宮頚管炎」→「卵管炎」→「骨盤腹膜炎」と病気が進んでゆき、卵管閉塞や卵管周囲癒着による不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。

検査は、まず過去に感染したことがあるかを調べるため、血液検査(抗体検査)をします。もし抗体があった場合には、現在も感染しているかどうかを確認するため(抗原検査)、子宮頸管粘液を綿棒で採取して調べます。

 

もし抗原検査で陽性だった場合には、治療をするためジスロマック(マクロライド系抗生物質)を服用します。その際は、パートナーと同時に薬の服用を開始します。

また、卵管の閉塞や狭窄、骨盤内の癒着などを併発している場合には、体外受精へのステップアップやFTカテーテル(卵管鏡下卵管形成術)を検討します。(狭窄・閉塞部分を通すことで、子宮外妊娠を生じさせてしまうこともあるため、ケースごとに判断していきます)
2

性交渉のベストタイミングは、排卵の2日前

排卵日チェッカーへの過信は禁物。不妊症学級やフーナーテストにより、正しい“タイミング”を知るだけで妊娠にいたるケースも

■フーナーテスト、子宮頸管粘液検査
フーナーテストは、医師の指示で排卵時期にあわせて性交渉を持ち、その後12時間以内にクリニックを受診。

子宮経験粘液を採取し、粘液のなかに精子が進入しているかどうかを調べる検査です。

フーナーテストの結果がよくなかった場合、女性側の原因としては、①子宮頚管粘液が少ないこと、②経験粘液の粘度(粘り気)が高いこと、②抗精子抗体(体内に入ってきた精子を活動できなくする)を持っていること、などがあげられます。

女性に抗精子抗体がある割合は、100人に1人いるかどうか程度とされています。

 

男性側の原因としては、①精子の量が少ない、②運動率が悪い、③抗精子抗体の存在などが疑われます。

③について、「えっ、なんで男性自身に精子を動けなくしてしまう抗体ができるの?」と思われるかもしれませんが、炎症や外傷、パイプカットなどにより出血した血液と精子が混ざることで、精子の活動能力が奪われてしまう抗体ができることがあります。

抗体を持つ男性は女性より多く、100人に数人程度とされています。

 

フーナーテストは、夫婦の状況によって検査結果が変動する場合もありますので、時期を変えて複数回検査をしてみることをお勧めします。

何度か検査をしてみても結果が不良だった場合には、女性は血液検査を行って、抗精子抗体がないかを確認します。

治療は、早めに人工授精や体外受精へステップアップすることを検討します。

 

また男性に抗精子抗体がある場合には、精液を洗浄し、精液中の抗体を取り除くことでAIHをすることができます(精子数や運動率が正常な場合)。

 

またフーナーテストの副効用として、医師の指示により排卵期に性交渉を持つことで、妊娠に至る方がたくさんいらっしゃいます。

フーナーテストは、検査の結果をどう評価するかで専門家の間でも意見が分かれることがありますが、テストをすることで(医師の指示でタイミングをとることで)、妊娠に至ることも多いことから、早期に受ける価値はあると考えます。

女性の抗精子抗体の結果が強陽性でも、自然妊娠される方はいますし、男性の場合では、血中に抗精子抗体があっても、局所にはあまりないというケースもあります。

たとえ結果が陽性だったとしても、「抗体があった。どうしよう・・・」と過敏に反応しすぎる必要はないと私は考えます。

 

■初診時に必要な時間と費用

施設により異なりますが、当クリニックの場合、問診、診察(超音波エコー検査・内診など)、診察結果や今後の治療方針についてのご説明、血液検査、会計で、トータル1〜2時間かかります。

なるべく、時間に余裕を持ってお越しください。

初診時の費用は、約6000~20000円ほどです(検査項目によって異なります)。感染症や特殊検査(血液検査)は自費診療となりますが、その他の診療については健康保険での診療となります。

 

■正しいタイミングとは?
当クリニックでは、初診までに不妊・不育学級を受講いただくことが多くなっています。

検査や治療の進め方についてお話しをするのですが、“正しいタイミングのとり方”というお話しもします。そうすると、初診時にすでに妊娠しておられる方がいらっしゃるんですよね。

 

実は、多くのみなさんが頼りにしている排卵日チェッカーですが、“この日(LHサージが強陽性)”と出た日に性交渉をもっていたのでは遅いことが多いのです。

なぜなら、①血中と尿中のホルモン値では数時間のタイムラグがある、②黄体ホルモンは排卵する前から出始めており、排卵日チェッカーで強陽性が出たときにはすでに排卵中で、子宮口は閉じられ始めており、精子は中へ入ってはいけないことが多い、という2つの理由によります。

ですので、排卵日チェッカーで強陽性が出るタイミングよりも、2日ほど早めに性交渉をする必要があります(精子の生存率により多少異なります)。

 

しかし「そんなの分かりっこない!」と感じられるかたが大半だと思いますので、不妊・不育症学級や診察時には、“おりものの粘度(粘り気)”による排卵日チェックの方法をお伝えしています。

おりものの観察をしていただき、記録をつけるだけで妊娠率は格段に上がります。

 

■ご主人が、タイミング療法を負担に感じている場合は・・・
自然妊娠での妊娠率はおよそ25%ですので、理論上、妊娠できるのは4カ月に1度程度という計算になります。

おまけに、妊娠できる卵は1年間で3〜4個しか排卵しないとされています。

卵が出る順番は変えられませんから、妊娠できる卵にいつ巡り会えるかは、それこそ“縁”の問題です。

 

よく「今月は右側から排卵しているので、右側の卵管が詰まっているし、今月はタイミングをとらなくてもいいですよね」とおっしゃる方がいますが、それは違います。

左右の卵巣間の距離は非常に短いですから、場合によっては右の卵巣から出て腹腔内を泳いでいる卵を、左の卵管がキャッチすることだってあるのです。だから「毎月全力でがんばったほうがいいですよ」とお伝えしています。

 

しかし、「今日は排卵日よ」と言われると、性交渉ができなくなってしまう男性は少なくありません。

年に3〜4個しか妊娠できる卵は出ないのですから、「今月もタイミングがとれなかった・・・」と悩むのは、あまりにもったいないことです。

そんな患者さんへは、“自然セット”というものをオススメしています。簡易注射器とカップがセットになったもので、カップをご主人に渡して精液を採取してもらい、奥様が注射器を使って精液をご自身の腟内に入れます。

ご主人の精子に運動率や数の低下があれば人工授精をする必要がありますが、奥様に問題がなく、精子も正常で、性交渉ができないだけなら、こんな方法もあるのです。年に3〜4個しか出ない妊娠できる卵子が精子と出会うためには、こうした方法で“実(じつ)をとる”ことも時には必要かもしれません。

 

“不妊かもしれない・・・”と一人で悩んでいる方や、周りからのプレッシャーに苦しい思いをされている方が多くいらっしゃるかと思います。まずは自分自身の身体を知るという意味で、勇気を持って検査を受けてみてください。

また、不妊の原因は男女半々といわれており、パートナーと二人で、治療にのぞむ姿勢が大切になってきます。

患者さんのお気持ちや体調、状況を最優先した診療を行っております。疑問や悩み、不安をひとつひとつ解決していきましょう。安心で納得のいく検査・治療がスタートできるよう、お手伝いさせていただきます。
3

取材・文/渡邉優希

先生に会える病院はこちら
施設名 神奈川レディースクリニック
診療科目 産婦人科
電話 初診予約専用ダイヤル:045-290-4893
診療時間内受付:045-290-8666
所在地 〒221-0822
横浜市神奈川区西神奈川1-11-5
ARTVISTA横浜ビル
最寄駅 JR東海道線・横浜線「東神奈川駅」より徒歩3分、京急線「仲木戸駅」より徒歩5分、東急東横線「東白楽駅」より徒歩4分
URL http://www.klc.jp/

治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

  • 原因のさぐり方
  • タイミング・ステップアップ
  • パートナーのこと
  • 治療に使う薬のこと
  • かけるお金のこと
  • 心のケア
  • 治療の痛み
  • 治療がうまく進まない
  • 最新治療

コーナー協力:メルクセローノ株式会社

不妊治療Q&A一覧へ

妊活・不妊対策を始めようへ

ご利用にあたっての注意・お願い

本コーナーに掲載する情報は、健康をテーマに、日々の暮らしのヒントとなる情報の提供を目的としているものであり、治療・診療行為を意図するものではありません。また、内容の正確性や、何らかの医療効果が得られることを保証するものではありません。
このことを充分ご認識の上、あくまで参考情報として本コーナーをご利用いただき、必要に応じ適切な医療機関の診察を受けるようお願いします。
本コーナーに掲載された情報、それに基づく行為により、何らかの不都合、不利益が発生し、また、損害を被った場合でも株式会社ベネッセコーポレーションは責任を負いかねますので予めご了承ください。