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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療がうまく進まない

2015.06.09子宮内膜症だと妊娠は難しいの?治療法は?

答えてくださった先生は・・・
中堀隆先生
財団法人倉敷中央病院・産婦人科部長
なかほり・たかし
1988年、川﨑医科大学医学部卒業。1988年5月〜1989年9月、京都大学医学部付属病院産婦人科勤務。1989年10月から現在まで、倉敷中央病院産婦人科にて診療にあたる。専門領域は産婦人科全般、生殖医療など。日本産科婦人科学会認定医。患者さんの負担軽減のためコストを抑えつつも最高水準の不妊治療を行っているため、患者さんは全国各地から訪れる。また産科も併設しているため、不妊治療後の出産も継続的に扱う。
若ければ内膜症の治療後に妊娠をめざす。40前後なら即不妊治療へ

女性の不妊原因のうち、およそ2割が子宮内膜症によるものといわれます。しかし現代の医学でも子宮内膜症の原因は分かっておらず、根治は難しいのが現状です。しかし治療をすれば妊娠することは十分可能で、“なかなか妊娠しないな”と感じたら、早めに診断・治療を受けることが大切です。子宮内膜症はどのような病気で、赤ちゃんを望む方はどのように治療をしていけばいいのか。婦人科疾患の治療・手術に加え、高度不妊治療も手がける産婦人科部長の中堀先生にお話を伺いました。

子宮内膜が卵巣や卵管に入り、癒着や炎症、閉塞を起こす

子宮内膜症は、本来は子宮内腔にしかない内膜が、卵巣や膣、腹壁などに飛び散り、月経のたびに剥離・出血を繰り返すことで臓器との癒着を起こす病気

子宮内膜症とは、本来、子宮内腔にしか存在しないはずの子宮内膜や子宮内膜のような働きをする組織が、卵巣や卵管、ダグラス窩(か)、膣、S状結腸、直腸、小腸、膀胱、腹壁など、子宮以外の場所にできる病気です。

子宮以外の場所にできた子宮内膜も、子宮内腔の子宮内膜と同じように、月経期になると剥離・出血を繰り返します。

しかしその剥離した血液や内膜は、体外に出ることができず体内に溜まります。

その結果、卵巣や卵管をはじめ、いろいろな臓器との癒着が起こり、不妊の原因になってしまうのです。

まだ原因は分かっていない。卵管を通って子宮内膜が腹腔内に出ていく説や、血液やリンパに乗って飛び散る説など4つの仮説が考えられている

子宮内膜症の原因はまだわかっていませんが、4つの仮説が考えられています。

 

一つめは「子宮内膜移植説」と呼ばれ、子宮内膜が卵管を通って、お腹の中(腹腔内)に出ていくというものです。

 

二つめは「体腔上皮化生説」です。

体腔上皮とは、臓器を覆う薄い膜や腸間膜の元になる組織のことで、胎児の成長過程で性別を決定するミュラー管という組織が変化してできます。

子宮や卵管もミュラー管からできており、同じミュラー管から出来ている体腔上皮にも、子宮内膜となる遺伝因子が備わっていて、子宮の内腔以外にも内膜のような組織を作ってしまうのでは、という仮説です。

 

三つめは「血行性進展説」で、血液に乗って子宮内膜が諸臓器に広がっていくというものです。

 

四つめは「リンパ行進展説」で、リンパを通して、子宮内膜組織が子宮以外の部位に運ばれ、そこで定着して増殖するというものです。

しかしどの仮説も子宮内膜症の原因として十分なものではなく、今後の研究が待たれます。

卵巣のなかに血液が溜まってしまうと、ひきつれや癒着が起こり、卵がうまく卵管に入っていけなくなり、不妊の原因に。また炎症があると卵の発育にも影響が

では、どうして子宮内膜症があると不妊になりやすいかというと、卵巣の中に血液がたまってしまうと、卵巣組織にひきつれや癒着が起こり、卵の移動が難しくなり、うまく卵管に入っていけなくなってしまうのです。

炎症がある場合は、卵の発育にも影響が出てきてしまいます。

 

まれに無症状の人もいますが、ひどい月経痛や腰痛があり、月経でないときにも、慢性的に痛みのある人もいます。

また、排便痛や性交痛も多くの患者さんにみられます。

年々、痛みが悪化していたら要注意です。

こうした症状に加え、なかなか妊娠しないという時には、放置せず、なるべく早めに受診をすることが大切です。

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患者さんの希望や症状、年齢により、治療プランを考える

治療は、手術療法か薬物療法で行われる。すぐに子どもが欲しい場合は、腹腔鏡手術や卵管鏡下形成術、あるいは不妊治療が選択肢となる

子宮内膜症の治療を表にまとめると、以下のようになります。

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すぐにお子さんを望む場合には、手術療法か不妊治療かが選択肢になります。

手術療法のうち「腹腔鏡手術」は、子宮内膜症が疑われる場合に、確定診断をするための検査も兼ねて行われる場合がほとんどです。

お腹の2箇所に1センチほど切開(穴をあける)をし、それぞれの穴から鉗子を入れ、癒着があれば剥がしたり、卵巣の一部を切除したりします。

 

また卵管がつまっている場合には、腹腔鏡手術と同時に、「卵管鏡下卵管形成術」も行います。

細い内視鏡(卵管鏡)を内蔵したカテーテルを膣から子宮へと挿入。卵管に近づけます。

そしてカテーテルに内蔵されたバルーン(風船)を膨らませて、卵管の中へバルーンを入れていきます。

つまっていたり、狭くなっている部分をバルーンで広げていきます。

腹腔鏡手術と卵管鏡下形成術を同時に行うことで、全身麻酔をする回数が一度で済むので、患者さんの体への負担が軽くなり、治療期間も短くて済むというメリットがあります。

手術で卵巣や卵管の働きを改善できれば、タイミング法やAIHをすることも可能。年齢や症状によっては、手術なしでいきなり不妊治療に入ることも

先ほど説明した腹腔鏡手術には一長一短あり、癒着を剥がすのはいいことですが、手術ですから麻酔などの危険性もありますし、卵巣の部分切除を行うことで正常な組織にダメージを与えてしまう(卵巣機能の低下を招く)こともあります。

入院も必要です。手術前後は一定期間、不妊治療ができませんから、年齢や症状によっては、いきなり不妊治療をスタートすることもあります。

 

年代別に、おおよその治療の進め方をみていきます。

患者さんがまだ20代〜30代前半で若い場合には、余裕をもって治療ができますから、手術をして卵巣や卵管の癒着などを改善し、極力自然な妊娠をめざします。

患者さんが35歳を超えていたら、少し急いで手術などの治療をし、早め早めに不妊治療のステップをあげていきます。手術により癒着部位を剥がすことができれば、AIH(人工授精)も可能かもしれません。

患者さんが40歳を超えていたら、内膜症の手術より先にIVF(体外受精)を行います。

いずれの場合でも、患者さんがどのような妊娠法を望まれるのかと、症状や年齢などを総合的に考えて、医師が治療プランをご提案することになります。

当面、子どもを望まない場合は、薬物療法で、痛みと症状のコントロールをするケースも

薬物療法は、妊娠の可能性は残したいけれど、当分はその予定がないときに行われます。

「GnRHアナログ療法」は、通常6カ月間薬を投与し、人工的に閉経状態をつくり出し、子宮内膜症の進行を抑えます。

薬を服用すると更年期のような症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗など)が現れます。

治療を中止すると再び月経が始まるので、病気が進行する可能性があります。

薬は点鼻薬と注射があり、6カ月投与して、6カ月休むというサイクルで行われます。

 

「タナゾール療法」は、通常4カ月薬を服用し、月経痛などの症状や病気の進行を抑えます。

タナゾールは男性ホルモンの誘導体なので、ニキビや体重増加などの副作用があります。

また服薬をやめると、子宮内膜症が進行する可能性があります。

 

「偽妊娠療法」は、低用量ピルを服用し、排卵と子宮内膜の増殖を抑えます。

経血が減りますし、月経痛の緩和にもなります。

 

「黄体ホルモン療法」は、排卵を抑え、かつ子宮内膜症の病変に直接働きかける効果を持った薬が使われます。

使用期間の制限がないため、長期的なコントロールが可能です。

服用中は不正出血が多少起こりやすくなりますが、更年期のような症状は起きにくい治療法です。

 

最近は結婚年齢も上がってきており、子宮内膜症の患者さんも増えていると感じています。

よく言われることですが、35歳を越えると子宮内膜症などの不妊因子がなくても、妊娠すること自体が難しくなります。

子宮内膜症の症状がある場合はもちろん、特に不調がなくても、子宮頸がんの検診も兼ねて、年に1度は婦人科を受診してほしいですね。

その際に、不妊につながるような因子がないか診てもらってください。

その上で「結婚したけど、なかなか妊娠しないな」という場合には、時間を置かず早めにご相談にいらしていただければと思います。

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取材・文/渡邉優希

施設名 公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
URL http://www.kchnet.or.jp/hunin/

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