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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療がうまく進まない

2015.09.04男女ともに不妊原因がはっきりしない場合、どのように治療に取り組んだらいいの?

答えてくださった先生は・・・
呉竹昭治先生
アートクリニック産婦人科院長/医学博士
くれたけ・しょうじ
1992年、福島県立医科大学卒業・医師免許取得。1995年、ハワイ大学留学。1996年、福島県立医科大学大学院卒業、会津中央病院医長。1997年、世界体外受精会議記念賞受賞(マウス1次精母細胞の受精発生能に関する検討)。1998年、日本産科婦人科学会専門医取得。世界体外受精会議記念賞受賞(tw5/tw32マウス精子の受精発生能に関する検討)。2000年、福島県立医科大学産婦人科助手。2003年、世界体外受精会議記念賞受賞(精子先体が欠損したノックアウトマウスの精子の受精・発生能の検討)。2004年7月、アートクリニック産婦人科開業。同院での妊娠成功数は毎年約200件に上り、治療により誕生した赤ちゃんは開院からトータルで2100人を超える。
治療を進める中で不妊原因を明らかにし、妊娠しやすい状態へ!

“赤ちゃんができないなあ”と思い、クリニックであれこれ検査を受けてみたものの、スクリーニング検査(一般不妊検査)では原因が見つからないことが多々あります。
しかしそれは検査では原因が特定できなかっただけで、治療を進めるうちに、「受精障害だったのか」「着床障害だったんだ」など、原因が特定できることは少なくありません。
不妊原因がはっきりしない場合の治療の進め方について、呉竹院長に詳しくお話しを伺いました。

体外受精なら、卵管因子と受精障害が同時に明らかに

不妊とは、一定期間経っても妊娠しない状態をさす。妊娠しづらい場合は、治療を進めながら原因を見つけて“妊娠しやすい”状態に改善していく

不妊というのは、100%妊娠しないことではなく、一定期間経っても妊娠しない状態を指します。

2015年6月に日本産科婦人科学会が、不妊の定義について、「妊娠を望んでも2年間かなわなかった場合」から「1年間」に見直す案を発表しています。

不妊原因がないカップルが1年間のうちに妊娠する割合は、99%とされています。

若い夫婦がタイミングをとった場合、1周期での妊娠率は25%程度で4周期タイミングをとれば1回は妊娠することができるといわれます。

 

つまりほとんどの不妊カップルは、“妊娠できない”のではなく、何らかの原因があって“妊娠しにくい”だけであり、妊娠を妨げている原因が何であるか治療を進めるなかで見つけることで、“妊娠しやすい”状態へと改善することができるのです。

最終的に原因が不明とされる不妊は、全体のわずか1.7%であり、そのほとんどは年齢によるものだとされています。

タイミング療法を6~7周期行っても妊娠しない場合は、子宮頸管因子をクリアするために人工授精へとステップアップする

一般的に、原因不明不妊だと診断されるのは、一般不妊検査が終わり、タイミング療法を半年ほど行っても妊娠しないという場合が多いかもしれません。

なぜならタイミング療法で妊娠する人は、6~7カ月タイミングをとることで、およそ90%が妊娠するからです。

 

タイミング療法で妊娠しない原因としては、

①子宮頸管因子

②卵管因子

③受精障害

④着床障害

の4つが考えられます。

 

このうち①子宮頸管因子は、精子が子宮の入り口を通り抜けられずに起こる不妊で、精子の数が少なかったり、元気がなかったり、あるいは頸管のバリアが強すぎて精子が子宮内に入れないことが原因です。

そのため、精子を直接子宮に注入する「人工授精」をすることで妊娠する確率が高まると考えられます。

タイミング療法で妊娠せず人工授精で妊娠できれば、不妊原因は①子宮頸管因子だったと特定されます。

人工授精で妊娠する人は、6回までに90%以上の方が妊娠されます。

人工授精を6回行っても妊娠しない場合は、

②卵管因子

③受精障害

④着床障害

が考えられますので、次の治療へステップアップします。

腹腔鏡を用いることで、卵管造影ではわからなかった軽度の卵管の変化を見つけることも可能。所見があれば、そのまま即治療へ

②の卵管因子は、卵管がつまり気味だったり、卵子をうまく拾えなかったり(キャッチアップ障害)する場合に起きます。

卵管については、最初の検査の段階で卵管造影を行い、狭窄や閉塞の有無を調べています。

 

しかし、卵管造影では見つけられなかった軽度の卵管の変化は、腹腔鏡を用いることで発見することができ、そこでなにか所見が見つかれば、そのまま治療に移行。

妊娠しやすい状態を作ることができます。

腹腔鏡は、お腹に0.5ミリから1センチ程度の穴をあけて内視鏡を入れることで、腹腔内の卵管、卵巣などを直接観察することができます。

 

また検査の途中で癒着などが見つかれば、そのまま電気メスや鉗子をつかって癒着している箇所を剥がしたり、悪い箇所を切除することもできるので、その後の1年間でおよそ半数の方が妊娠に至っています。

腹腔鏡による検査・治療は、妊娠するか否かがわかるのに1年近い時間がかかります。

 

それでもし妊娠しなければ、

③受精障害

④着床障害

を疑わねばなりません。
そのため女性が40歳前後と高齢の場合には、腹腔鏡を飛ばして、②卵管因子と③受精障害を同時に明らかにできる体外受精へとステップアップすることが勧められます。
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着床障害は、卵子の質や体調を改善することが大切

早く妊娠したい方、40歳以上の方は、タイミング療法と人工授精は3周期ずつにし、早めに体外受精へステップアップを!

もともと体外受精は、②の卵管因子を治療するために開発されました。

なかなか妊娠しなかったのに体外受精であっさりと妊娠した場合には、原因は卵管因子だと考えられます。

③の受精障害は、卵子を取り出して、受精の有無を確認することでしかわかりません。

当クリニックでは、取り出した卵子6個のうち1つしか受精しない場合を受精障害としています。

おそらく体外受精まで行った方の不妊原因のうち3割がこの受精障害だと考えられ、中でも13%ぐらいの人が完全受精障害ではないかとみています。

 

もし受精障害だとわかった場合には、受精卵(胚)を効率良く得るためにも、顕微授精が必要です。

受精障害の場合は、タイミング療法や人工授精といった一般不妊治療はすべて無効です。

最初の検査の段階で受精障害がわかれば治療期間が短縮できるのですが、現状の技術では、体外受精をすることでしか受精障害を発見することはできません。

 

そのため早く妊娠したい方や40歳以上の方は、タイミング療法、人工授精とも3周期ずつに短縮し、早めに体外受精へステップアップされることをおすすめします。

当クリニックでは、タイミング療法は3周期までに80%、人工授精では精液所見が正常な場合は3周期までに80%の方が妊娠されますので、それぞれ3周期トライすれば十分だと考えます。

なかなか着床しない場合には、排卵誘発の方法を変えることで卵子の質を高めたり、内膜の状態を整えた上で凍結胚移植を行う

そして最後は、なかなか胚が子宮に着床しない④着床障害ですが、原因は子宮内膜の状態が良くないこと、卵子の質がよくないこと、孵化(ふか)障害、子宮と卵子の相性が悪いこと(子宮に腺筋症や内膜症、筋腫、奇形など器質的な異常がある)などが考えられます。

子宮内膜は、排卵誘発などにより高濃度のエストロゲンにさらされると、着床には向かない状態になることがわかっています。

そのため受精卵(胚)は採卵した周期には子宮へ戻さず、一旦、全胚を凍結保存。

子宮内膜を整えた後に、子宮へ移植することで着床率を高めることができます。

 

また受精卵によっては5日目に胚盤胞にならず、6日目になる卵もあります。

この場合は移植日をずらして胚を子宮に戻すことで、着床率を高められることもあります。

卵子の質がよくない場合には、3つの原因が考えられます。

 
1つめは、排卵誘発の方法がその人にあっていない場合です。

解決策としては、1回1回排卵誘発の方法を変えることで、その方にあった方法を探してゆきます。

1度失敗したら他の方法でトライ、また失敗したら別の方法でトライします。

方法を変えただけで別人のような素晴らしい卵が採れることもあるので、あきらめずに様々な方法を試してみることが大切です。

 

2つめは、糖尿病やコレステロール、中性脂肪などのメタボ予備軍、睡眠不足、不規則でバランスの悪い食生活などがあります。

このケースでは、妊娠するまでの期間だけ予防薬を服用したり、生活の改善をしたりしていきます。

 

そして3つめは、年齢が原因の場合です。

これを解決するのがいちばん難しいかもしれません。

しかし卵子も体の細胞のひとつですので、「化粧のノリがよい」「今日は体調がいい」と感じられる状態は卵子にとっても良いはずです。

肌や体のことを考えながら生活をするといいかもしれません。

 
またビタミンも積極的に摂ることをおすすめします(ビタミンAだけは胎児の催奇性があるので過剰摂取には気をつけてください)。

孵化(ふか)障害の場合には、アシストハッチングという解決方法があります。

孵化とは、胚盤胞まで育った受精卵が着床前にカラ(透明帯)を破って外に出ることを言います。

通常、胚盤胞は自力でカラを破ることができるのですが、カラがうまく破れないと着床することができません。

この場合には、胚のカラを切開したり、取り除いたりすることで胚の脱出を助けます。これをアシストハッチングといいます。

子宮の疾患や奇形など器質的な異常がある場合には、手術などの治療をして着床しやすい状態に整えます。

不妊専門医は、トンネルを歩くときに、患者さんの足元を照らしながら最短距離で出口に導くガイドです

不妊治療は「出口の見えないトンネルを歩いているようなもの」だと言われます。

しかし私は不妊治療に対して、少し違うイメージをもっています。

 

私たち不妊専門医は、複雑なトンネル内の地図と、患者さんの足元を照らす懐中電灯、最新の測定器を携えて、たくさんあるトンネル内の経路を、ひとつひとつ探索していくガイドとなります。

たくさんある経路には行き止まりの道もあり、やみくもに勘だけを頼りに突き進むと、大事な時間を無駄にしてしまうかもしれません。

そう、出口につながる経路に、最短距離で導くのがガイドである私たち不妊専門医なのです。

 

もちろんスタートが早いほどゴールに到着するのも早いので、思い立ったらすぐにお近くのクリニックに足を運んでみてください。

きっとトンネルの先に一筋の光が見つかるはずです。
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取材・文/渡邉優希

施設名 アートクリニック産婦人科(アートクリニックサンフジンカ)
URL http://art-clinic.byoinnavi.jp/

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