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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療がうまく進まない

2016.02.02卵巣機能が低下している場合の治療方法について教えて!

答えてくださった先生は・・・
宇津宮隆史先生
セント・ルカ産婦人科院長/医学博士
うつのみや・たかふみ 1973年、熊本大学医学部卒業。1973年、九州大学温泉治療学研究所(別府)入局。1981年、医学博士(九州大学)「排卵障害婦人に関する臨床内分泌学的研究」。1989年、大分県立病院がんセンター産婦人科部長。1992年、セント・ルカ産婦人科開設。1998年、セント・ルカ生殖医療研究所開設。2009年、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)副理事長(~2011年)。2012年、日本受精着床学会常務理事。2013年、日本卵子学会監事(~2015年)。2013年、第31回日本受精着床学会総会・学術講演会会長。チーム医療により治療を行い、最終的にきちんと治療した患者さんのおよそ7割が妊娠、卒業されている。
注射+クロミフェン、DHEAなどを併用し、良質な卵子を育てる

加齢や早発閉経などの原因により、卵巣自体の機能が低下しまっている場合、なかなか採卵ができないなど、治療は困難を極めることが少なくありません。
また卵巣内部で子宮内膜が増殖する「チョコレートのう腫」がある場合には、注意深く経過観察をしながら不妊治療をする必要があります。卵巣機能が低下している場合の治療の進め方について、宇津宮院長に詳しくお話しを伺いました。

1周期目は、卵巣を刺激することで反応を見る

初回はアンタゴニスト法で刺激をしてレスポンスをみる。そこで1〜2個しか卵胞の発育がみられない場合は、DHEAやビタミンE、クロミッドなどを併用する

高齢などの理由でAMHが1ng/mlを下回っており、FSHは15〜20mIU/mlを超えているような卵巣機能の低下が認められるケースでは、まずは標準的な方法で刺激を行います。
当院ではアンタゴニスト法で排卵誘発を行い、1周期目は様子をみます。ここで複数の卵胞が見られた場合は問題ありませんので、採卵、胚培養へと進みます。

 

一方で、1〜2個しか卵胞が見られない場合には、2周期目は、自宅での自己注射ができるrFSH製剤(リコンビナントFSH)を300IU/日 、あるいはhMGの量を600IU/日まで増やし、加えて各種サプリメントと「クロミフェン製剤(クロミッド)」を服用します。
サプリメントは、卵巣機能を高める効果があるとされる「DHEA」(50mg/日)(ホルモンバランスを整える効果があり、黄体ホルモンの原料でもある)、微小循環を改善する「ビタミンE」、「トレンタール」を用いて子宮内膜を厚くします。
DHEAは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、エストロゲンやテストステロンなどの性ホルモンに変換されます。このDHEAを治療開始から採卵時まで服用することで、卵胞数が増えたり、質改善などの効果が得られる場合があります。
2周期目の治療でも卵胞が1〜2個しか見られない場合には、3周期目からはクロミッドのみを服用し、治療を続けます。

 

上記のような治療で卵胞の発育が認められても、高齢で卵巣機能が低下した方の場合は、卵胞は見えても採卵ができなかったり(空胞)、採卵はできても半数の受精卵が3日目以降は育たなかったりで、なかなか厳しいケースが少なくありません。

 

しかしホルモンの値は体調やストレスの有無などによって毎月かなり変動しますし、今まではなかなか卵胞が育たなかったのに、ある月は良好な卵子がいくつも採れてビックリ!というケースは少なくありません。

特にFSH値は、ストレスや体調などで変動しますので、ある月の数値が良くなくても、「もうだめかも・・・」などと思いつめる必要はまったくありません。上手に気分転換をして、ストレスを溜めないようにしながら治療をしていくことが大切です。

 

一方でPCOタイプ(多嚢胞性卵巣症候群)の方は、40歳以上であっても、毎周期、10個程度の採卵できるケースが多くなっています。

しかし数が得られても、PCOの場合はグレードの高い受精卵を得るのが難しいことが多くなっています。排卵誘発法を工夫しながら何度か回数を重ねることで、良好な受精卵(胚盤胞)を得ることは可能ですので、粘り強くがんばっていきましょう。

早発閉経、あるいは近い状況の場合は、基本的に高齢で卵巣機能が低下している方と同じステップで治療を進める

40歳未満で、FSH値が40mIU/ml以上を示しており、自然に閉経を迎えてしまうことを「早発閉経」と呼びます。

早発閉経が起こる原因はよく分かっていませんが、複数の遺伝子のエラーが関わっているのでは?と考えられています。お母さんの閉経が早いと娘も早く閉経する傾向があり、また姉妹の傾向も似ることが多いとされています。

 

早発閉経にも重症度のレベルはありますが、治療は、基本的には先ほどご説明した高齢で卵巣機能が低下している場合と同じように進めていきます。

初回はアンタゴニスト法で刺激を行い、2周期目はホルモン注射の量を増やし、かつサプリメントとクロミフェンの服用をしていきます。

 

話しは少し逸れますが、高齢の方の場合、採卵ができても7〜8割の卵には染色体異常があります。良好な胚盤胞が5個育っても、そのうちの3.5~4個には染色体異常が生じている計算になります。

 

しかし早発閉経の方の場合は、もし卵が採れれば、まだ年齢は若いわけですから、染色体異常は少ないのでは・・・と予想します。もちろんこれは仮説にしか過ぎませんが、採卵できさえすれば、その後の治療には期待が持てるかもしれません。

01

“どうして治療をするか”を夫婦でよく話し合う

卵巣機能が低下している場合には、子宮内膜症がある場合でも不妊治療をどんどん行っていく

子宮内膜症は、不妊を引き起こす病気としては最もポピュラーな病気のひとつです。
子宮内膜と同じ性質をもった細胞が卵巣から分泌される女性ホルモンの影響を受けて、子宮内膜以外の場所で毎月月経期になると剥離・出血を繰り返します。

 

こうした内膜のような物質が腹腔内にできると、その“異物”に対して、免疫反応により生成されたさまざまな物質が腹腔内に浸出します。

その物質が、卵子や精子、卵管の働きを妨げ、不妊になるといわれています。

私たちの研究では、子宮内膜症のある人は、ない人に比べて、腹水内に“プロスタグランジン”という物質が高濃度で含まれていることを発見しました。病気自体(内膜の癒着など)よりも、この物質による生体の反応物質が妊娠を妨げているのでは?と考えています。

そのため、こうした反応物質を腹腔内から洗い流し、除去する必要があります。

 

しかしながら、子宮内膜症は閉経するまで完全には治癒しない病気です。

高齢で卵巣機能が低下している場合には、不妊治療をどんどん進めていく必要があります。内膜症の治療に気をとられていると、卵巣の状態が1年前に比べて急激に低下してしまうことがあるからです。

患者さんが40歳前後と高齢の場合には、癒着部分を剥がすなどの手術より、体外受精による不妊治療を行っていきます。

チョコレートのう腫がある場合には、がん化の有無などをチェックしつつ少しでも早く妊娠できるよう体外受精を行う

子宮内膜症が卵巣内部で発生し、古い血液がどろどろに溶けたチョコレートのように溜まってしまったものを「チョコレートのう腫(のう胞)」と呼びます。

チョコレートのう腫がある場合に気をつけないといけないのは、がん化と感染、破裂です。

特に怖いのは“がん化”で、およそ0.75%の人に起こるとされており、半年に1度は検診を行って注意深くみていく必要があります。(中でも直径が10センチ以上、年齢が40歳以上の人は、特に気をつける必要があります。

 

チョコレートのう腫がある場合の不妊治療は、以下のように進めていきます。

 

①悪性のものでないか腹腔鏡で確認する。

②腹腔鏡によりチョコレートのう腫の治療を行う。(内容物を吸引して無水エタノールを注入する)

③少しでも早く妊娠できるよう、体外受精を行っていく。

 
同時に、半年に1度は腫瘍マーカーのチェックと、必要な場合にはMRI撮影を行います。

“どうして不妊治療をするのか”を夫婦で考えてみることが大切。一緒にがんばった!という思いがあればその後の人生も手を取り合っていける

これから治療をしようと考えておられる場合は、“どうして不妊治療をしようとしているのか”を、ちゃんと夫婦で話し合ってみることが大切です。

最近は高齢になってから治療を始めるカップルが増えていることから、お子さんが授からないまま終わる方も多くなっています。

万が一、子どもができずに終わった場合でも、「夫婦でよくがんばったよね」とか「一緒に乗り越えてきたよね」という自覚があれば、その後の人生も支え合って生きていけます。

 

しかし、よく考えることなく治療を始め、「あんなにお金を使ったのに授からなかった」「仕事まで犠牲にしたのに・・・」「私だけが必死でがんばっていた」など、夫婦で不満を言い合っていると治療が終わっても後悔や被害者感情しか残りません。

子どもを授かるとは、どういうことなのか? 家族を作るってどういう意味があるのか?を、夫婦でよく話し合ってから治療を始めほしいですね。

決して“生まれればいい”“生まれさえすればハッピーエンド”ではないのです。

 

そして親になる人には、“子どもを健康に育てなければいけない”という自覚ももってほしいですね。

母親が痩せすぎていたり、太りすぎているとハイリスク妊娠につながります。

最近の研究では、母親が痩せすぎていると赤ちゃんが低体重になりやすく、将来、高い確率で糖尿病や肥満などになりやすいということが分かってきました。生まれながらにして、子どもにハンディを負わせることになってしまうのです。

 

また、女性ホルモンを高めようとザクロジュースやマカなどを飲んでいる人を見かけますが、これらの食べ物には女性ホルモンと似た物質が含まれているため、体内の濃度が高まることで、脳下垂体から産生されるゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量が減ってしまうことがあります。

ゴナドトロピンは、下垂体に対して「FSHやLHを出しなさい」と命令し、排卵を促すホルモンですから、ザクロやマカを服用することでゴナドトロピンが減ってしまっては元も子もありません。

 

そして喫煙はもってのほかです。

当院では、女性が喫煙している場合は、「禁煙してから3カ月後にきてください」とお伝えしています。副流煙の問題がありますので、もちろんご主人にも禁煙をしていただきたいと思います。

 

いろいろ厳しいこともお話ししましたが、まずはご夫婦で『赤ちゃん~今ならきっと授かる~講座』などの教室にいらしてください。ホルモンや胚培養、遺伝のこと、自然周期・刺激周期のこと、お金のことなど、不妊治療は非常に複雑で高度な知識が必要とされますから、ご夫婦で学ぶことが大切です。

 

妊娠・出産は奇跡の連続ですが、どんなときも、ご本人、ご主人、主治医、看護師、病院のスタッフみんなが手を携えることで、がんばっていけるはずです。一緒に、明るい未来を信じて前に進んでいきましょう。
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取材・文/渡邉優希

施設名 セント・ルカ産婦人科
URL http://www.st-luke.jp/

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