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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療がうまく進まない

2017.02.21受精卵の凍結保存・移植 みんなの素朴な疑問Q&A

答えてくださった先生は・・・
村田泰隆先生
むらた・やすたか ARTクリニックみらい院長/医学博士。1994年、名古屋大学医学部卒業。同年、安城更生病院にて産婦人科全般に従事。1998年、名古屋大学付属病院にて、周産期・不妊症を専門に診療および研究。2003年、名古屋大学医学部大学院卒業。同年、IVF大阪クリニック・なんばクリニックにて体外受精年間1500周期以上の臨床経験を積む。2007年、竹内病院トヨタ不妊センター・センター長(およそ1300周期以上の体外受精をすべて担当。一般治療を含め約800症例を妊娠出産に導く)、2010年、エンジェルベルクリニック・不妊センター長(約3000例を妊娠出産に導く)。2016年、ARTクリニックみらい開院。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医。一般治療から高度生殖医療、確率の高い最先端の技術まで備え、専門資格者のチームによりご夫婦の背景やご希望にあわせたサポートを行っている。
日本では30人に1人の赤ちゃんが、凍結胚を経て生まれている

日本で体外受精により生まれる赤ちゃんのうち、およそ75〜80%が凍結融解胚を移植して産まれてきています。そもそも受精卵(胚)を凍結することで赤ちゃんに影響はないのか、凍結胚は何年ぐらい保存しておけるのか、1度に二つの胚(受精卵)を戻すことで双子を授かることはできるのかなど、なかなか人には聞けないけれど気になる疑問を、ARTクリニックみらい院長の村田先生にぶつけてみました。

新鮮胚移植より凍結融解胚移植のほうが成績がよい

Q1.凍結胚はどのくらいの期間、保管できますか?凍結融解胚による妊娠は、凍結後何年が最高記録ですか?

A1.保存は半永久的に可能で、凍結後およそ20年のちに移植されたケースが世界最長記録です

1983年、凍結融解胚による胚移植を受けた女性が世界で初めて出産に至りました。

日本ではその5年後、1988年に凍結融解胚による体外受精が行われました。

日本で胚(受精卵)の凍結が始まってから、およそ30年が経過したことになります。

 

胚凍結の技術が進歩し、2000年頃から“ガラス化法”という手法が普及しはじめました。

この方法は操作にテクニックを要しますが、日本人は手先が器用ということもあったのでしょう。

世界に先駆けて日本において広く普及しています。

凍結された胚は、半永久的に保存が可能です。

凍結融解胚での移植は、凍結後19年数カ月というのが世界最高記録で、およそ20年という眠りから覚め、お母さんのお腹に戻され出産に至りました。このときは、前核期(受精初日)で凍結した胚でした。

 

Q2.胚を凍結することで、赤ちゃんへの影響はありませんか?

A2.日本で生まれる赤ちゃんのうち、30人に1人は凍結胚を経て無事に生まれてきています。安心して治療を受けていただけると考えています

日本で体外受精により生まれる赤ちゃんの75〜80%は、凍結融解を経て産まれてきています。

生殖補助医療(ART)により生まれた赤ちゃんは4万人を超えており(日本で生まれる赤ちゃんの26人に1人)、このうちおよそ8割が凍結融解胚の移植によると考えると、30人に1人が凍結胚を経てこの世に生を受けています。小学校のクラスで考えると、1クラスに1人は、凍結融解を経て生まれてきた子がいるということになります。

 

最近、胚を凍結することによる影響として、産まれてくる赤ちゃんがやや大きい(100グラム程度)、胎盤がはがれにくい、などの報告があり、今後もその経過を見守っていく必要があります。

どちらも母児に先々まで悪影響を及ぼすものではなく、妊娠率の向上や多胎妊娠の予防などの多大なメリットから、積極的にこの技術を利用していただいてよいと思います。

 

Q3.どうして新鮮胚より凍結融解胚を移植した方が妊娠率が高いのですか? また新鮮胚移植に適したケースを教えてください

A3.採卵周期の内膜着床環境の乱れ具合、凍結融解による胚の劣化具合、この二つの要素の兼ね合いの結果です。技術が向上し、凍結融解による胚のダメージがほとんどなくなったため、採卵周期で戻す(新鮮移植)より、凍結融解移植の方が成績が良くなったのです。

採卵周期において子宮内膜が乱れる原因として、排卵誘発剤を用いることで高濃度のエストロゲンに曝露されること、複数の卵胞が成熟することで黄体ホルモン(プロゲステロン)が自然周期より早いタイミングで大量に分泌されること、が挙げられます。排卵誘発剤によっては子宮内膜が薄くなります。

そのため、いったん胚を凍結し、別の周期に内膜を整えてから移植することで着床率が高くなるのです。

 

子宮内膜には、胚の受け入れが可能な期間、着床の窓、というものがあり、胚の成長スピードと同期している必要があります。一般に採卵周期では、プロゲステロンの早期上昇により、着床の窓が早く開いて早く閉じる傾向があります。

 

一方、年齢が高めの方の胚は成長のスピードが遅いことが多く、“着床の窓”とのズレが生じがちです。

すなわち、子宮の“着床の窓”が開いているのに、まだ胚は着床できる状態にまで成長しておらず、

着床のチャンスを逃してしまうことがあるのです。凍結技術を用いることで、そのズレを修正することができ、着床率の向上につながるのです。

 

しかし “着床”に関してはブラックボックスのようにまだ謎につつまれており、今後のさらなる研究が待たれます。一方の新鮮胚移植は、自然に近い、薬剤の必要がない(少ない)、経済的負担が少ない、などのメリットが挙げられます。

子宮内膜が荒れていない場合(育った卵子が少なく、エストロゲンの上昇やプロゲステロンの早期上昇がみられない場合)、凍結融解によって胚質の大きな低下が懸念される場合(高齢の方の胚、胚質があまりよくない場合)などでは、新鮮移植を試みてもよいかもしれません。

※さらされること。

遺伝性疾患がある場合は、着床前診断が認められることも

Q4.せっかく体外受精を受けるなら、年齢的なリミットも迫っているし一気に2人の子どもに恵まれたいです。一度に2つの胚を戻すことはできますか?

A4.一度に2つの胚を戻すことはできますが、原則として戻すのは1つです。双子は出産時のリスクが高くなることから避けた方がいいですね

双子の出産は、単胎の出産にくらべて周産期リスクが7〜10倍にもなるとされています。

多胎妊娠の場合、正産期より早く生まれてしまうことが多く、未熟による後遺障害(脳性麻痺、精神発達遅滞、視力障害など)が心配です。

未熟児の脳障害(脳室周囲白質軟化症)では、脳室の周辺にある運動神経が損傷され、生涯に渡って寝たきりで歩けないケースもあります。母体側でも、妊娠高血圧症候群などの命に係わるリスクが増大します。

 

多胎妊娠は、出産も育児も非常に大変です。無事な出産とお子様の成長、その後の子育てのためにも、凍結融解技術を利用して、お一人ずつの出産をお勧めします。

ただし、一つしか戻していないのに、一卵性の双子になる場合もあります。お二人目を望む場合は、第一子出産後に落ち着いてから次の胚移植を行うようにしてください。

 

Q5.質の良い受精卵がいくつかできた場合(余剰胚がある場合)、毎月移植を受けることはできますか?

A5.ご本人が“早く授かりたい”と前向きで、条件が整えば毎月移植することは可能です

ご本人のお気持ち、子宮のコンディション、心身ともに問題がなければ、妊娠のチャンスは月に一回訪れます。毎月でも凍結融解胚移植は可能です。

しかし良好胚移植を繰り返しても、例えば3-4回(4つ以上)戻しても妊娠に至らない場合には、卵管水腫など他に阻害要因がないか、注意を払う必要があるでしょう。

 

Q6.体外受精で過去に2度流産をしています。胚の染色体検査をしてから、問題ないものだけを移植することはできますか?

A6.PGS(着床前スクリーニング)のご希望ですが、日本産科婦人科学会で未だ容認されておらず、行うことはできません。PGD(着床前診断)は、学会の倫理審査で許可された限定されたケースを対象に可能です。

PGDは、重篤な遺伝性疾患やご夫婦どちらかが染色体構造異常の保因者である習慣流産例を対象に、日本産科婦人科学会の承認を得た上で行われます。検査の結果、異常がないと判断された胚を子宮内に戻します。

 

一方のPGSは、胚の染色体数のスクリーニング検査を行い、異数性のある胚を除いて移植をする方法です。高齢女性の場合、妊娠をしても約60%は流産となります。これは卵子の老化によって増加する染色体異常(染色体異数性;主として染色体が一本多い)が主な要因です。

妊娠しない、または妊娠しても流産となる異数性胚を移植しないことで、流産率を下げようというものです。欧米ではPGSは広く普及していますが、日本ではまだ臨床で用いることは認められていません。

 

妊娠はひとつの目標ですが、最終目標ではありません。授かったその瞬間から、希望に満ちた新しい人生が始まります。未来を担うお子様を育てあげる数十年にわたる新たな責任もスタートします。そのためには、ご夫婦そろって先々まで健康であることが大切であり、現段階から、食生活や睡眠、運動習慣などに気を配る必要があります。このことが、赤ちゃんを呼び込むチャンスを増やすことは間違いありません。

 

赤ちゃんは、できれば自然に訪れてほしいものです。しかし何らかの事情で赤ちゃんが授からない場合には、ぜひ専門家のサポートをご利用ください。ご夫婦の夢を叶えるため、精一杯のお手伝いをさせていただきます。どんなことでもお気軽にご相談ください。望む “みらい”をお届けできますよう、スタッフ一同心を込めてご夫婦と向き合っていきたいと思います。

取材・文/渡邉優希

 

施設名 ARTクリニックみらい 病院の詳細はこちら
URL http://art-cl-mirai.com/

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