トップページ  >  女性と子どもの健康コーナー ここからげんき  >  赤ちゃんを迎えたいあなたに!妊活・不妊対策を始めよう  >  治療最前線の名医に聞く!不妊治療 Q&A  >  治療に使う薬のこと  >  不妊治療で使われる、ホルモン剤について教えて!(1)

治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療に使う薬のこと

2015.06.17不妊治療で使われる、ホルモン剤について教えて!(1)

答えてくださった先生は・・・
原鐵晃先生
県立広島病院・生殖医療科/主任部長
はら・てつあき
1980年、広島大学医学部医学科卒業。広島大学周産母子センター准教授を経て、県立広島病院生殖医療科主任部長。専門分野は生殖内分泌(体外受精胚移植)、生殖外科。県立広島病院・生殖医療科では、体外受精や胚移植などを中心とした「生殖補助医療」と、不妊症や不育症の原因となっている子宮筋腫や腹腔内癒着、子宮内癒着、子宮奇形などに対する「内視鏡下手術」を二本柱として診療を行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会生殖医療専門医。日本産科婦人科内視鏡技術認定医。著書に『たまごは、待ってくれません』(南々社)など。
家で自己注射ができる薬も。症状や効果、利便性などを考え薬の選択を!

なかなか排卵しない場合、ホルモンの薬で排卵を促す治療をします。
ホルモンの薬というと怖いイメージを持つ方もいるかもしれまませんが、最新の考え方のひとつとして、卵巣への過剰な刺激を抑え、1つの卵を大切に育てていく方法があります。
これにより、卵巣の腫れや多胎妊娠を限りなく低く抑えることができます。
最新の排卵誘発の方法について、県立広島病院生殖医療科で主任部長を務める原先生に伺いました。

排卵障害は、ホルモンバランスの乱れによるものが多い

卵巣刺激には、卵を1つだけ育てる単一卵胞発育をめざした「排卵誘発」と、複数の卵を育てる「調節卵巣刺激」という2つの方法がある

卵巣刺激は、その目的によって方法が異なります。

無排卵など排卵障害があり、タイミング法や人工授精による妊娠を望む場合には、1周期で1つだけ卵(卵胞)を育てる単一卵胞発育をめざした「排卵誘発」という方法がとられます。

 

一方で体外受精を行う場合には、一周期で複数の卵(卵胞)を育てる「調節卵巣刺激」という卵巣刺激法が用いられます。

採卵後、培養した受精卵(胚)を1つずつ子宮に戻します。

この記事では、1つの卵を育てる単一卵胞発育をめざした「排卵誘発」法についてお話しします。

排卵しない原因には、脳の視床下部や下垂体に原因がある場合や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という疾患、卵巣性のものなどがある

排卵誘発についてお話しする前に、排卵障害について簡単にご説明します。

排卵は、まず脳にある視床下部が下垂体に「FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を分泌せよ!」と命令(GnRH:ゴナドトロピン刺激ホルモン)を出します。

すると下垂体からLHとFSH(この2つはゴナドトロピンと呼ばれます)が分泌され、卵胞の発育が始まります。

 

排卵障害を起こす主な原因には、大きく分けて3つあります。

 

一つめは、脳の視床下部や下垂体に何らかのトラブルがあり、なかなか排卵しない中枢性のものですFSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体形成ホルモン)とも値が低いのが特徴です。

 

二つめは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とよばれる疾患です。PCOSは、卵をつくるホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)のうち、LHの値が高くなってしまい、LHとFSHのバランスが悪くなり卵が大きく育ちません。

男性ホルモン値が高くなっているケースもあります。

PCOSによる排卵障害には、完全に無排卵の場合と、周期は長いけれど時々は排卵する場合があります。

 

三つめは、卵巣性の排卵障害です。

視床下部や下垂体からたくさんの命令(ホルモン)が出ているのにも関わらず、卵巣が反応しないことが原因です。

脳からの命令(ホルモン)はたくさん出ているので、FSH・LHとも値が高いのが特徴です。

卵巣に問題がある場合の排卵障害は、治療が難しいケースが多くなっています。

0611img1

卵巣への過剰な刺激を避け、1つの卵胞を育てる「低用量漸増投与法」

中枢性の軽度の排卵障害やPCOSの場合は、まずクロミフェン製剤(クロミッド)と呼ばれる飲み薬を使用する

中枢性の軽度の排卵障害やPCOSによる排卵障害では、まずクロミフェン製剤(クロミッド)という飲み薬での治療を試みます。

月経開始の5日目から5日間、1錠ずつ服用します。

10日から14日目頃に超音波エコーで卵胞の発育状況を確認し、必要に応じて薬の増量や減量をします。

 

万が一、18ミリを越えた卵胞が3つ以上認められた場合には、多胎妊娠を防ぐため、排卵誘発をキャンセルします。

クロミフェン製剤には、抗エストロゲン作用があるため、子宮内膜が薄くなったり、子宮頸管粘液が減少したりといった副作用が出る場合があります。

そのため卵巣や子宮の状態を慎重に観察しながら使用していきます。

クロミフェン製剤は中枢性の排卵障害には効きが弱いという特性があります。

クロミフェン製剤を数カ月使用しても成果が得られない場合は、注射による排卵誘発法へと移行します。

クロミフェン製剤で効果が得られない場合は、ゴナドトロピン製剤を注射で投与する。注射薬は、通院して打つタイプと、家での自己注射が可能なタイプがある

完全な中枢性排卵障害や、クロミフェン製剤が効きにくい場合は、ゴナドトロピン製剤を注射で投与する「ゴナドトロピン療法」を行います。

現在、国内で使用可能なゴナドトロピン製剤には、閉経後女性から採取した「尿由来hMG/FSH製剤」と、「遺伝子組換えヒトFSH製剤」(リコンビナントFSH製剤)という2種類があります。

それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。

0611img3

中枢性の無排卵(FSH・LHとも低い場合)には、尿由来hMG/FSH製剤を使用することが多く、PCOSなどLHが高い場合には、LHを含まないリコンビナントFSH製剤もよく使います。

リコンビナントFSH製剤は、自宅での自己注射が認められています。

排卵まで毎日通院して注射を受けるのは時間的にも精神的にもとても大変です。

自宅で自己注射が行えるリコンビナント製剤は、通院回数が抑えられるため、患者さんの負担を大幅に軽減。仕事や家事と治療との両立をしやすくしています。

注射薬を少しずつ増量しながら投与することで、卵巣への過剰な刺激や複数の卵が育つのを防ぐことができる

複数の卵胞が育ってしまうことや、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を防ぐ排卵誘発の方法として、hMG製剤やリコンビナントFSH製剤を使用して行う「低用量漸増投与法」があります。

卵胞の発育状況を観察しながら、少しずつ注射薬を増量して投与をしていきます。

注射は、リコンビナントFSH製剤であれば、自宅で自己注射にて行うことができます。

 

最初は50〜75IUを注射し、7〜14日後に卵胞発育が認められないときには、さらに半量を増量します。

そして1週間後に、また半量を増やします。

4〜5週間投与を続けても、卵胞発育が認められない場合は、治療をいったんキャンセルし、今度は初回より増量してスタートをします。そしてまた1週間ごとに半量ずつ増量していきます。

この低用量漸増投与法により、一つ、ないしは二つの卵胞発育が認められた場合は、排卵を起こすホルモン(LH)が含まれたhCG製剤を使い、排卵を起こします。

そしてタイミング法や人工授精を実施します。

※クロミフェンを服用した場合でも、排卵が起きなければhCGを投与することがあります。

 

排卵誘発の方法は、患者さんの症状や効果、利便性などを総合的に判断して選ぶことが大切です。疑問点や心配なことがあればドクターに相談し、その方にとって最適な方法を選んでいきましょう。

0611img2

取材・文/渡邉優希

施設名 県立広島病院(ケンリツヒロシマビョウイン)
URL http://www.hph.pref.hiroshima.jp/

治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

  • 原因のさぐり方
  • タイミング・ステップアップ
  • パートナーのこと
  • 治療に使う薬のこと
  • かけるお金のこと
  • 心のケア
  • 治療の痛み
  • 治療がうまく進まない
  • 最新治療

コーナー協力:メルクセローノ株式会社

不妊治療Q&A一覧へ

妊活・不妊対策を始めようへ

ご利用にあたっての注意・お願い

本コーナーに掲載する情報は、健康をテーマに、日々の暮らしのヒントとなる情報の提供を目的としているものであり、治療・診療行為を意図するものではありません。また、内容の正確性や、何らかの医療効果が得られることを保証するものではありません。
このことを充分ご認識の上、あくまで参考情報として本コーナーをご利用いただき、必要に応じ適切な医療機関の診察を受けるようお願いします。
本コーナーに掲載された情報、それに基づく行為により、何らかの不都合、不利益が発生し、また、損害を被った場合でも株式会社ベネッセコーポレーションは責任を負いかねますので予めご了承ください。