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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療に使う薬のこと

2015.07.01不妊治療で使われる、ホルモン剤について教えて!(2)

答えてくださった先生は・・・
坂本知巳先生
婦人科 さかもと ともみクリニック院長
さかもと・ともみ
1989年3月、弘前大学医学部卒業。1993年3月、弘前大学大学院医学研究科(外科系産婦人科学)修了。同年4月、弘前大学医学部産婦人科助手。同年10月、青森労災病院産婦人科医長。1996年4月、弘前大学医学部附属病院助手。2005年3月、弘前大学医学部附属病院を退職。同年7月、婦人科 さかもと ともみクリニックを開院。
下垂体をコントロールして排卵を抑制しながら、複数の卵を育てていく

排卵誘発の方法には、薬を使わない「自然周期法」やクロミッドなどを服用する「低刺激法」、さらには、下垂体から出るホルモンをコントロールする薬と卵(卵胞)を育てる薬を併用する「GnRHアゴニスト/ロング法」や「GnRHアンタゴニスト法」があります。
今回は「ロング法」と「アンタゴニスト法」それぞれについて、その特性と治療の進め方などについて、坂本院長に詳しくお話を伺います。

下垂体をコントロールしつつ、卵を育てるホルモンの薬を使う

排卵は、下垂体から出されるホルモンによって制御されており、排卵誘発の方法は、下垂体をコントロールする薬によって分けられる

排卵誘発の方法は、脳の下垂体をコントロールする薬によって分類されます。

冒頭でも少し触れましたが、①下垂体のコントロールを行わない「自然周期法」。

②下垂体(正確には視床下部)への作用が弱く、卵巣への刺激も比較的少ないクロミフェン製剤などを用いる「低刺激法」。

そして③GnRHアゴニストや④GnRHアンタゴニストという薬で下垂体から出るホルモンをコントロール(抑制)しつつ、卵を育てるホルモンの薬を注射して複数の卵を育成する「ロング法」と「アンタゴニスト法」です。

 

“排卵を誘発するのに、どうして下垂体が関係するの?”と不思議に思われるかもしれませんので、排卵が起こるしくみについて簡単にご説明します。

排卵は、まず脳の視床下部が下垂体に「FSH(卵胞放出ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を分泌せよ!」と命令(GnRH:ゴナドトロピン放出ホルモン)を出します。

すると下垂体からFSHとLH(この2つを総称してゴナドトロピンと呼ぶ)が分泌され、“卵を育ててください”と卵巣に指令が出されます。

すると卵の発育が始まり、直径が20mm程度になると卵巣から卵子が飛び出します。

つまり、卵の発育には下垂体から出るホルモンが大きく関係しているのです。

 

③GnRHアゴニストと④GnRHアンタゴニストは、この視床下部から出されるGnRHを調節することで、下垂体から出されるFSHとLHを強力にコントロール(抑制)します。

その上で卵を育てるホルモンの薬(排卵誘発剤)を注射し、卵を育てていきます。

 

☆GnRHアゴニスト(ロング法)

黄体中期(高温期半ば)からGnRHアゴニストを点鼻。そして月経開始後5〜7日目前後からは、卵を育てるホルモンの薬を6〜7日間注射する

【治療方法の一例】
ロング法

準備周期(前周期)の黄体中期(高温期半ば)から採卵前まで、GnRHアゴニストを点鼻します。

そして治療周期の月経開始5〜7日目前後から、FSH製剤(卵を育てるホルモンの薬)を6〜10日間、毎日注射します。

注射する量は、最初は150IUから始め、反応がよくないときは300IUまで増やします。

最後は卵を成熟させるために(LHサージをかけるため)、hCGの注射を行い採卵をします。

 

【特徴】

ロング法は、体外受精の排卵誘発法の中ではいちばん古くから行われており、日本では20年以上の実績があります。

そのため副作用の出現パターンも分かっており、きめ細かな対処が可能です。

また、安定した卵胞数(平均して5〜10個)を確保できる方法でもあります。

勝手に排卵してしまうこともほとんどないため、採卵日を確定させやすいというメリットもあります。

 

【しくみ】

GnRHアゴニストには、下垂体から出る卵胞を育てるホルモン(特にLH)を抑制する作用があります。

この薬を使う目的には2つあり、1つめはLHの分泌を抑制している間に卵を育てるホルモンの薬(FSH製剤)を注射することで卵巣を刺激して、複数個の卵胞を均一に育てるということ。

2つめは、採卵前に勝手に排卵してしまわないように抑える (LHサージがかからないようにする)ということがあります。

 

少し難しくなりますが、GnRHアゴニストには、投与を始めると一時的にFSHとLHをドバッと大量に放出させる効果(フレアアップ現象)があります。

大量にFSHとLHが出ると脳は、「こんなに大量に出たらまずいよ・・・」と危機感を持ち、しばらくはFSHとLHを出させる役目をもつGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を受け入れるカギ穴(受容体)の数を減らして様子を見ようとします。

すると受容体が減って、下垂体から放出されるホルモン(特にLH)がほとんど出なくなるのです。

これをダウンレギュレーションといいます。

その間に、卵を育てるホルモンの薬であるFSH製剤を注射することで、複数の卵が均一にすくすく育つというしくみです。

※GnRHアゴニストを使うときは、ほとんどの場合「ロング法」のことを指しますが、FSHとLHが一時的に大量に放出されるフレアアップ効果を卵胞育成に利用する「ショート法」もあります。しかし一般的には、GnRHアゴニストを使う場合は「ロング法」のことを指します。

 

☆GnRHアンタゴニスト法

月経開始3〜4日めから卵を育てるホルモンの薬を注射。卵胞のサイズが14mm以上になったら、GnRHアンタゴニストを併用する

【治療方法の一例】
アンタゴニスト法

月経開始後、3日目あるいは4日目から卵を育てるホルモンの薬(hMG製剤あるいはFSH製剤)の注射を開始します。

最も大きい卵胞のサイズが14〜15mm程度になったら、GnRHアンタゴニストを排卵時まで併用していきます。

そして卵胞のサイズが17〜18mmになったらhCG※を注射し、卵胞を成熟させます(LHサージをかけます)。

※PCOSなどの場合は、排卵を促すためにhCGの替わりにGnRHアゴニスト薬を使用し、フレアアップ効果を利用することもあります。

 

【特徴】

卵胞発育の前半は、下垂体ホルモンの抑制を行わない(本人が産出するFSHも利用できる)ので、アゴニスト法に比べ、卵胞が発育しやすいという特徴があります。

またアゴニスト法に比べて、ほんのわずかではありますが勝手に排卵をしてしまう可能性があります。

 

【しくみ】

卵胞がある程度育ってきたら、勝手に排卵しないようGnRHアンタゴニストを注射します。

この注射により、FSHとLHを出させる役目をもつGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を受け入れるカギ穴(受容体)をふさいでしまいます。

これを“マスキング”といいます。

GnRHアンタゴニストでは、FSHとLHを両方とも強力に抑制し、その後は卵を育てるホルモンの薬を使っていきます。
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2つの方法は、卵巣に残っている卵の数などによって選択する

GnRHアゴニスト(ロング法)とアンタゴニスト法の比較

どちらの方法も、採卵数や卵の質はほぼ同じ。その時々で、最適な方法を使い分ける

2つの方法を、比較すると以下のようになります。
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また他の薬剤との組み合わせですが、併用薬はどんな薬を使っても、その作用が強くなることや弱くなるということはありません。

しかしアゴニスト薬は、点鼻薬で使われることが多いため、花粉症の季節には抗ヒスタミン薬の点鼻薬がよく使われるため、少し注意が必要です。

副作用の心配というより、あくまで薬剤の吸収率が問題になるので、担当のドクターとよく相談をしてください。

体外受精では、採卵後の黄体ホルモン剤の投与は絶対に必要。採卵後に2週間服用し、妊娠率向上をサポートする

排卵後は、自然な排卵であれば卵子の入っていた袋(卵胞)が黄体ホルモン(プロゲステロン)を産出します。

しかし注射針により採卵すると、卵だけでなく、黄体ホルモンの産生場所となる顆粒膜細胞(卵胞をうち張りしている細胞)まで吸い出してしまうので、必ず黄体ホルモンの補充が必要になります。

黄体ホルモン剤は、採卵後2週間投与します。

投与法としては経口(内服)、筋肉注射、腟坐薬などの方法があります。黄体ホルモンを補充することで妊娠率が向上することが確認されています。

治療をステップアップするタイミングを見誤らないで! 何歳ぐらいで子どもを抱くのかというイメージをもってほしい

たまに、同じ治療法をズルズルと続けている方がいますが、タイミング法や人工授精などの治療法は3〜6カ月が1つの区切りになります。

統計的にはある程度の期間が過ぎると妊娠の可能性が低くなりますので、いちばん妊娠率が高い治療法である、体外受精までのステップアップのタイミングを見誤らないようにしてください。

 

現在の年齢にもよると思いますが、なるべく早い時期に体外受精に進むことが、妊娠率を高めるためのひとつのカギになります。

そのためにも、何歳くらいで子どもを抱きたいのかというイメージを持つことも大切です。

例えば、30歳で治療を始めて40歳で子どもを抱くことを考える方はいないと思います。何歳ぐらいで赤ちゃんを授かりたいかを具体的にイメージし、出産計画や治療のスケジュールを組み立ててみるようにしてください。

治療は、早く始めれば始めるほど成果に結びつきやすくなります。

“なかなか赤ちゃんができないなあ”と感じたら、ためらわずに相談にいらしてください。まずは原因を探り、次の一手を一緒に考えていければと思います。
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取材・文/渡邉優希

施設名 婦人科 さかもと ともみクリニック(フジンカ サカモトトモミ クリニック)
URL http://www.sakamoto-t-clinic.jp/

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