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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

治療に使う薬のこと

2018.02.13もっと知ろう治療のこと、薬剤のこと Q&A

答えてくださった先生は・・・
西村 満 先生
西村ウイメンズクリニック院長/医学博士/にしむら・みつる 1953年、茨城県水戸市生まれ。1980年、新潟大学医学部卒業。同年、新潟大学医学部附属病院ならびに新潟大学関連病院にて研鑽。1989年、医学博士号取得。1990年、聖隷浜松病院産婦人科に勤務。高度生殖医療を含めた不妊症診療を中心とした医療に携わる。1998年、聖隷浜松病院不妊内分泌科部長。2000年、西村ウイメンズクリニックを開業。高度生殖医療まで扱う不妊専門クリニックとして、毎年およそ800人の赤ちゃん誕生を手がける。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。
不妊治療では、卵を育てるための薬など、さまざまな薬剤が用いられます。治療が始まると先生からも説明がありますが、それでも初めて聞く治療方法や薬剤名だと、なかなか理解するのが難しいかもしれません。そこで今回は、特に興味関心が高い分野である排卵誘発にまつわる治療方法や薬剤について、詳しく西村院長に伺いました。

最適刺激で採れる卵の数を増やすと、良い卵と出会える可能性が高くなる

低刺激=身体に優しい、調節卵巣刺激=負担が大きいわけではない

Q1.体外受精をする際、いくつぐらい採卵ができると良いですか?

A1.「10個程度、採れるといいですね」と患者さんにはお話しています。
患者さんにはいつも「10個程度、採れるといいですね」とお話ししています。10個前後の卵を得られれば、高齢の方でも1〜2個は良い卵が含まれている可能性が高くなります。
30代半ばまでの若い方であれば、5〜6個採卵できれば、良い卵に巡り会える可能性があります。しかし年齢を重ねるに従い、良い卵に出会える確率が低くなりますので、たくさんの卵を得ることが必要になります。
10個程度の卵を採れるようにするためには、調節卵巣刺激(排卵誘発)をすることが望ましいと考えます。調節卵巣刺激とは、体外受精において、卵胞の発育状況を見ながら、排卵誘発剤を計画的に使用し、採卵をベストな状態で行う治療方法です。
当院では主にショート法という薬剤の投与スケジュールを用いて治療を行っており、超音波エコーで卵胞(AF;前胞状卵胞)の様子を丁寧にモニターしながら、薬剤量を細かく調整。少しでもよい卵が育つよう、過去の経験値などを駆使して治療を行っています。

Q2. 刺激方法としての飲み薬と注射剤の違いは何でしょうか? それぞれの特徴について教えてください。

A2.飲み薬は効き目がマイルドな分、採れる卵が少ないことが多いですね。一方、注射薬は卵巣を直接刺激するので、たくさんの卵を採ることも可能になります。
飲み薬での刺激を一般的に“低刺激法”、注射薬などでの刺激を一般的に“調節卵巣刺激法”と読んでいます。それぞれの特徴をまとめると表のようになります。

どちらにもメリット・デメリットがありますが、低刺激だから身体に優しい、調節卵巣刺激だから身体に良くないというのは一面的な物の見方かもしれません。低刺激法は、経口薬をメインとして治療を行うため、服薬が簡便ですが、採れる卵の数が少ないため、採卵回数が多くなります。一方で、調節卵巣刺激法は、注射剤をメインとして治療を行うため、経口薬と比べると服薬が負担になるかもしれませんが、たくさんの卵が採れることが多いので、1度の採卵で済むことが多くなっています。もし受精卵(胚)が残った場合は、第二子、第三子の妊娠に使えるかもしれません。
それぞれの特徴をよく理解した上で、治療を受けてほしいと思います。

Q3.調節卵巣刺激法では、たくさんの卵が採れる反面、質のよくない卵の数も増えると聞きます。これは本当でしょうか?

A3.調節卵巣刺激だからよくないということはありません。その方がもともと持っている卵巣の資質のようなものが関係すると考えます
調節卵巣刺激により排卵誘発を行うことが、良くない卵を増やすということはありません。調節卵巣刺激、低刺激にかかわらず、その方のもっているもの、言ってみれば“卵巣の資質”のようなものが卵の質には関係するのではと考えています。
超音波診断やAMH(抗ミュラー菅ホルモン)の値などで事前に診断していても、実際に排卵誘発をしてみないと卵の質がどうなるかはわかりません。若くても良い卵が採れないかたはいますし、歳を重ねていても卵の質がいいかたはいらっしゃいます。
しかしながらQ1でもお答えしましたが、若いかたは少ない卵でも良い卵に巡り会える確率が高くなります。そのため低刺激(=採れる卵が少ない)でも大丈夫というケースもあります。
一方で高齢の方は、ある程度、卵の数がないと良い卵に巡り会えないケースがほとんどです。たとえば40歳前後の方の場合、10個採卵しても、個人差がありますが胚盤胞まで育つ良い卵は1〜2個程度のことが多いです。低刺激だと、採卵できる数が少ないので良い卵に出会えず、何度も採卵が必要になるケースがほとんどです。採卵には出血や感染のリスクがありますから、できるだけ回数を減らしたほうがいいと考えます。
良い卵に出会うためにも、一度でたくさんの卵が得られる調節卵巣刺激での治療を進めた方がいいケースが多いかもしれません。

受診前に、どこまでの治療を望むか夫婦で話し合ってほしい

Q4.AMHの値が低い場合、どのように排卵誘発をするのが望ましいですか?

A4.まずは調節卵巣刺激による排卵誘発を行ってみて反応を見てみます。それで反応が低ければ、次回からは低刺激による誘発を行います。
AMHが低い方は、まず1回は調節卵巣刺激による排卵誘発を行ってみます。私の場合は、値が0.5を超えていたら調節卵巣刺激でやってみて、どのくらい卵ができるか反応を見ます。
それの結果、あまり反応せず、卵が2〜3個しかできなければ、2回目からは低刺激に切り替えます。
しかし興味深いのは、一度調節卵巣刺激による排卵誘発を行うと、眠っている卵胞が目を覚ますのか、2回目に低刺激による誘発を行なうと7〜8個程度の卵が採れるケースがあるのです。こういう事例もありますので、AMHの値が低いかたでも、1度目は調節卵巣刺激による誘発を行ってみるようにしています。

Q5. 少しでも早く赤ちゃんを授かるために、受診するときに、準備しておいたほうがいいことがあれば教えてください。

A5.ご夫婦で“どこまでの治療を望むのか”を、よく話し合ってほしいですね。
高齢になってから治療を始める場合は、すぐに体外受精をしたほうが良いケースもあります。しかしご本人の意志を無視して、「すぐに体外受精をしましょう」と押しつけるのは、いかがなものかと私は考えています。
そのためにもできれば受診前に、“どこまでの治療を望むのか”をご夫婦でよく話し合っておいてほしいですね。お二人での話し合いが難しい場合には、当院では初診の際、医師による診察の前に、全てのご夫婦に対して、不妊コーディネーターによるカウンセリング(面接)を実施していますので、その場でお互いの思いのたけを話してくださってもいいと思います。
ご夫婦の足並みが揃っていると、治療のステップアップが必要になったとき、スムーズに次へと進むことができます。ぜひお二人で、治療について話し合いをしてほしいですね。

そしてもう一つは、体外受精についての理解を深めてほしいということがあります。体外受精のことをよく分かっていないために、治療に踏み込めないという方はたくさんいらっしゃいます。理解不足のために、イメージだけで、体外受精や顕微授精のような高度生殖医療を避けるのはもったいないかもしれません。当院では月に1度か2度、不妊治療、特に体外受精について学ぶ「不妊学級」を開催しています。このような機会をぜひ活用されてみてはいかがでしょうか。

当院では一般治療(タイミング療法と人工授精)でも400人近い赤ちゃんが毎年誕生しています。最近の治療成績は、一般不妊治療と体外受精での妊娠が5対5であり、一般不妊治療の内訳ではタイミング療法と人工授精が3対1となっています。このことからも、タイミング療法や人工授精での治療を決しておざなりにしてはいけないと考えています。ちゃんと検査をして治療を開始することで、タイミング療法でも妊娠されるかたは大勢います。不妊治療=体外受精ではありません。その方にあった治療方法を見つけながら、少しでも早く赤ちゃんを授かれるよう一緒に頑張っていきましょう。

取材・文/渡邉由希

施設名 西村ウイメンズクリニック
URL http://www.ivf-nishimura.or.jp/

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