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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

最新治療

2015.03.09あまり知られていない、不妊症・不育症の原因って?

答えてくださった先生は・・・
古賀文敏先生
古賀文敏ウイメンズクリニック院長
こが・ふみとし
大分医科大学卒業後、久留米大学産婦人科入局。久留米大学病院、国立小倉病院で産婦人科全般と麻酔管理の研修後、聖マリア病院新生児センターにて出産後の母子ケアを学ぶ。国立小倉病院成育センター不妊部門の立ち上げ、久留米大学総合周産期母子センターの不妊・内分泌部門主任を経て、2007年5月に古賀文敏ウイメンズクリニックを開設、昨年6月に移転・拡張。日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医。
不妊症や不育症の原因には、胎児の異常やビタミンD不足も

日本でも流産を繰り返す方を対象として、着床前スクリーニングの特別臨床研究の開始が発表されました。
胚の染色体異常について改めて注目されています。
その一方で、染色体が正常なのにもかかわらず、着床しにくい方や流産を繰り返してしまう方も。
その原因として、ビタミンDなどの栄養学的アプローチが有効であるとの発表が関心を集めています。
国立病院や大学病院を経て、開業後もずっと不妊症や不育症について第一線の研究と診療に携わってこられた古賀文敏先生に、最新の研究についてお話しを伺いました。

なかなか着床しない場合、実は胚自体に問題があることが多い

染色体に異常のない胚を戻すことで、42~43歳でも7割以上の着床率が得られるというデータも

体外受精で胚を子宮に戻す際、着床率を上げるには、良い胚を戻すことが一にも二にも重要ということはよく言われます。

それは、成熟した元気で良質な卵子を使うということももちろんですが、染色体に異常がないものという意味も含まれます。

日本では、まだ受精卵(胚)の着床前診断はこれからです。

 

しかし海外では、胚盤胞移植を行う前に染色体の22or23本すべてを調べることで、42-3歳の患者さんでも、およそ7割の着床率を得ているというデータがあります。

妊娠を希望する方が流産を経験すると、喪失体験のために妊娠すること自体が怖くなる場合もあります。

“命の選別”につながるという倫理的な問題はありますが、不妊に悩むカップルにとっては、高い妊娠継続率を見込める「異常のない胚を使った体外受精」を行えることは、朗報です。

 

日本では、2014年11月に日本産科婦人科学会が、当面は、流産を2回以上繰り返した女性や、体外受精に3回連続して不成功の女性を対象として、3年間かけて臨床研究を行う案を承認しています。

もちろん、着床前診断をして染色体に異常のない胚を戻しても、着床しないケースはたくさんあります。

しかし胚の染色体を調べて体外受精を行えば、着床率が飛躍的に高まることは確かですので、今後は日本でも必要な方には行われていくことになるのではないでしょうか。
胎児

不妊症だけでなく不育症も、赤ちゃん自体が原因のケースが多い。何度か流産を繰り返している場合は、一度、胎児の染色体を調べてもらうことも必要

私が大学病院で診療に携わっていた当時、流産を繰り返してしまった方の胎児を調べて見ると、7~8割は赤ちゃんの問題(胎児染色体異常)でした。

以前は胎児の染色体異常は偶然起こるものであって、流産を繰り返す場合、胎児染色体異常が繰り返される頻度は高くないと思われてきました。

そのため多くの施設では、胎児の染色体を調べなかったため、習慣流産の半分は原因不明とされていました。

 

その一方で、抗リン脂質抗体症候群などの特殊な原因に注目が集まり、ヘパリンの注射や夫のリンパ球移植など、カップルにとって負担の重い治療が行われてきた経緯があります。

体外受精で胚を毎日観察している私たちにとって「胚の染色体の問題が一番大きい」という推察はきわめて自然の流れでもあります。

特に女性の年齢が上がるとその比率はますます高くなってきます。

「遅延排卵はないか?」「どういった状態で排卵まで至るか?」「卵巣予備能はどうか?」といった不妊症に関わる問題が不育症とも関連しているのです。

何度も流産された方の中には、過去に低用量アスピリンやヘパリンを使用しても流産を経験される方もいます。

 

こういう場合はまず、胎児の染色体を調べてもらうことをおすすめします。

その上で、卵管水腫や子宮形態などの観察、(ARTでは)胚の発育速度、形態はどうだったのかなどの詳細な検討が必要です。

いずれにしても、最終的にはほとんどの方が出産まで至りますので、つらい時には、医師や看護師に相談できる信頼関係が大事だと思います。
検査

不妊症の原因には、母体の栄養バランスが影響

タンパク質の摂取が足りていないことで、卵巣年齢が高くなっていたり、母体の健康が損なわれているケースも

不妊症や不育症の原因には、赤ちゃんの側の問題が大きいことをご紹介しました。

しかし胎児の問題に加えて、母体の栄養不足という問題もクローズアップされつつあります。

「えっ、この飽食の現代に栄養不足!?」と不思議に思われるかもしれませんが、コンビニでお弁当を選ぶ際に、必要な栄養素よりカロリー表示にばかり目がいく方もおられるかもしれません。

おにぎりや菓子パンなど、糖質ばかりを選んでしまった罪滅ぼしに、「野菜ジュースを飲んでおけば大丈夫だよね」と考え、追加で購入。

ますます糖質過多になっている現実には気づいていないのかもしれません。

 

私が診察している患者さんにも、ヨガなどに凝っていて、野菜や果物類はたっぷり食べているけど、肉や魚はほとんど召し上がらないことで卵巣年齢が高くなっているという方がいます。

見かけはとてもスレンダーでかっこいいのですが、タンパク質や脂質、ビタミンが足りていないのです。

そもそも女性ホルモンの原料はみなさんが遠ざけている脂質のコレステロールなのですから!

糖質過多による影響は、急激な血糖値の上昇より、むしろその後の低血糖のほうが強いと言われています。

 

ご主人のうつ状態で悩んでいる方、赤ちゃんの夜泣きで悩んでいる方もこの低血糖が関係していると言われています。

毎日の食事では糖質を制限し、血糖が安定する蛋白質の比率を増やすようにすることで色々なことが改善します。

生理前に頭痛に悩まれる方も珍しくありませんが、これも多くは月経前症候群(PMS)や片頭痛ではなく、潜在性の鉄欠乏性貧血です。

アメリカでは、良好な蛋白質をきちんと摂ることで、胚の質が改善したという発表が昨今増えています。

医食同源と古くから言われているように、正しい情報を得て、栄養学的アプローチに取り組んでみてはいかがでしょうか。

さらに最新の研究では、日に当たらないことによるビタミンDの不足が不妊症や不育症に大きく関係しているのでは?という研究結果も──

最近は、花粉症で苦しんでおられるかたが大勢いらっしゃいますが、これは日本人が日を浴びなくなっていることと関係があるかも、という学説が注目を浴びています。

日照時間の少ない北欧のノルウェーやスウエーデンで花粉症が多いことから研究が始まったようで、日本人も紫外線を浴びる量が減ってきた頃から、花粉症の患者さんが増えてきているというデータがあるのです。

皆さんもご存じのように、紫外線を浴びることにより体内でコレステロールからビタミンDが生成されます。

魚類に多く含まれていますが、一般に食事のみで必要量を満たすことは難しいとされています。

このビタミンDは体内でとても大切な役割を果たしていて、カルシウムが小腸から吸収されて骨になるのを助けたり、免疫力を高めたりしていることが分かっています。

 

妊娠の成立にもビタミンDは大きく関わっていて、卵子が成熟したり、胚が着床したりする際にビタミンDが足りないとうまくいきません。

またビタミンDの体内濃度が高い方は、AMH(卵巣の中にどれくらいの数の卵子が残っているかが分かるホルモン)の値が高いことが多く、体外受精でも妊娠率が高いといわれています。

妊娠を望んでいる人はもちろん、妊娠中から授乳期にかけても、胎児や赤ちゃんに十分なカルシウムを与えるという意味でビタミンDは不可欠です。

昨年アメリカで、流産を繰り返している方はビタミンD不足のことが多く、免疫系の異常が習慣流産のリスク因子になるとの発表がありました。ビタミンDは、アレルギーだけでなく妊娠、流産においても最も注目されているビタミンなのです。
診察
取材・文/渡邉優希 撮影/加藤タカミツ(冒頭のプロフィール写真のみ)

施設名 古賀文敏ウイメンズクリニック
URL http://www.koga-f.jp/

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