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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

最新治療

2015.12.01新鮮胚と凍結胚、それぞれの特性(メリット・デメリット)は?

答えてくださった先生は・・・
矢野直美先生
池下レディースクリニック吉祥寺 院長
やの・なおみ 
1985年3月、女子学院高等学校卒業。1991年3月、東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院産科婦人科にて研修開始。日本学術振興会特別研究員。1998年3月、東京大学大学院医学系研究科博士課程卒業。武蔵野赤十字病院を経て、2006年3月、池下レディースクリニック広小路・副院長。2009年3月より池下レディースクリニック吉祥寺・院長。医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医。女性の一生に寄り添う診療と、子どもを持ちたいという思いに応える治療で、患者さんからの信頼も厚い。
新鮮胚か凍結胚かは、ホルモン数値や子宮内膜の状態によって選択する

受精卵(胚)を子宮へ移植する際、凍結融解胚(以下・凍結胚)がいいのか、新鮮胚のほうがいいのか悩んだことがあるかもしれません。 最近では凍結胚による移植が増えており、新鮮胚移植と比較して凍結胚移植の妊娠率が高いという統計がでています。
しかし本当のところはどうなのでしょうか。新鮮胚、凍結胚、それぞれのメリット/デメリットと、選択するときのポイントを、矢野院長に詳しくお伺いしました。

凍結したほうが妊娠率が高くなる?

近年、凍結胚移植の施行数が飛躍的に増加している。その理由として、OHSSや多胎妊娠等のリスク回避、凍結技術の進歩、適切な子宮内膜環境で移植することによる妊娠率の改善があげられる。

近年は、新鮮胚移植より、凍結胚移植を選択する割合のほうが高くなっています。

その理由としてまず考えられるのは、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)が悪化するリスク回避のためです。OHSSは、排卵誘発が強すぎた場合、卵巣が膨れ上がったり、増加しすぎたホルモンの作用により腹水や胸水が溜まったりする状態です。

腹部が膨満して苦しいだけではなく、血液が濃縮することにより血栓症のリスクが高まります。

妊娠をすると、hCGというホルモンが大量に分泌されてさらに卵巣を刺激し、OHSSを悪化させてしまいます。

 

また、多胎妊娠をできるだけ回避するため、移植胚数は原則1個、条件付きでも最大2個までということが、産婦人科学会では繰り返し推奨されてきました。

新鮮胚移植した場合も余剰胚は凍結するので、以前より多くの余剰胚を凍結するようになりました。

 

このようなリスク回避のためとはいえ、胚を凍結すると聞くと、胚がダメージを受けることを心配されると思います。

胚凍結が行われるようになった初期の頃に行われていた緩慢凍結法という方法と比較して、近年広く行われているガラス化法という凍結方法により、胚の細胞を傷つけることなく凍結保存できるようになり、解凍時の胚の回復率は飛躍的に改善しました。

融解の際にダウングレードすることもありますが、胚の生存率は95%前後であり、凍結後は半永久的に胚を保存することができます。

 

また、凍結胚移植としたほうが、着床率が改善する場合もあり、リスク回避というより積極的に胚凍結を行っている側面もあります。

 

その理由として、採卵時は排卵誘発の影響で子宮内膜環境が着床に必ずしも適切でないことが挙げられます。

多数の卵胞が発育すると、採卵前からの過剰なホルモン上昇により、胚が着床しやすい内膜の時期と胚の時期がずれてしまうことがあります。

 

また、内服薬の排卵誘発剤を使用した周期では子宮内膜が十分厚くならず、着床しにくい場合があります。

このような状態の場合、採卵周期には移植をせず一旦受精卵を凍結し、卵巣や子宮内膜の状態を整えた後で移植を行うことにより着床率の改善が期待されます。

 

下記の日本産科婦人科学会の集計したグラフを見て頂くとわかるように、凍結杯移植の妊娠率が新鮮胚移植の妊娠率を上回っています。
しかし、よく見て頂くと、凍結胚移植の成績が改善しているのはともかく,新鮮胚移植の妊娠率が低下してきているように見えることにお気づきでしょうか。
これは、胚凍結は良好胚のみとしている場合が多く、逆に新鮮胚移植では良好胚の基準に達していない胚移植も含まれていることが影響している可能性があります。

当院でも、胚を凍結する際には、採卵5,6日後に胚盤胞まで発育したもののなかでも、胚盤胞の評価として広く使われているガードナー分類という診断基準で3BB以上に相当する、グレードの良いものを選んで凍結します(施設により基準は異なります)。

 

なぜなら、もともと質の良くない胚は、凍結融解のストレスにも弱く、解凍時にさらに状態が悪化する可能性があるからです。

結果として、凍結胚移植では良好胚のみを移植することにより、妊娠率は高くなります。「凍結をする=妊娠率が飛躍的に高くなる」とは一概には言えない理由がここにあります。

 

一方、ひとつも良好胚に該当しない胚のみだった場合、「凍結するのは難しそうだけれど、この胚はどうしますか?(捨てますか?)」と患者さんに尋ねると、「可能性がゼロではないなら、移植をお願いします」と依頼されることがあります。

また、「なかなか胚盤胞まで成長しないので、初期胚で体に戻してください」とおっしゃる方もいます。

新鮮胚の妊娠率が高くならないのは、こうした症例が含まれているという事情があるかもしれません。
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※日本産科婦人科学会データより
ガラス化法が主流となった2000年頃を境に、凍結胚移植での妊娠率が上がっているのがわかります。これは凍結・融解技術の向上により凍結胚移植をする症例が増えたこと、良好胚のみを凍結保存していることなどに起因すると考えられます。

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凍結胚移植のデメリットは、凍結・融解時の胚へのダメージがゼロではないこと。そして、凍結保存のコストが案外かかること

凍結胚移植は、いいことずくめに見えますが、デメリットもあります。

 

ひとつめは、凍結・融解時のダメージです。

2000年頃から凍結技術は格段に進化しましたが、どんなに良い胚であっても、凍結・融解時にダメージを受ける可能性は0%ではありません。数値的には、5-10%前後の確率でダウングレードする可能性があります。

 

またコストの問題もあります。

胚凍結や融解操作にそれぞれ費用に加え、胚の保存にもコストがかかります。1回の採卵で多数の胚を凍結できる方は良いのですが、排卵誘発を低刺激でのみ行いたいと希望される患者さんの場合、毎月1個の受精卵を、凍結して融解して、という操作を繰り返すと、コストは案外高くなるかもしれません。

 

結論として、新鮮胚移植か、凍結胚移植は、どう選んだらいいか?ですが・・・

・初回の採卵で良好胚が複数個得られた場合、身体のリスクが無い状態であれば新鮮胚移植を行い、残りは凍結保存。新鮮胚で妊娠しなかった場合は、次周期以降に凍結胚移植を行う。

・過去の採卵で良好な新鮮胚が着床していない場合は積極的に凍結する。子宮内膜を整えた上で凍結胚移植を行う。

当院はこのような方向で説明していますが、最終的には患者さん個々の状況に応じて決めています。

 

少し話しは逸れますが、「胚盤胞まで育たないと、凍結はできないのですか?」と尋ねられることがあります。結論としては、初期胚で凍結することも可能です。

また、スケジュール上の問題で「培養4日目は来院できるけれど、3日目、5日目は仕事で来られません」などのご事情があるときには、4日目に新鮮胚で移植をする、または胚盤胞まで育てて凍結保存をする、という選択もできます。

「絶対にこの方法でなければ・・・」という正解はありませんから、不安や疑問に思うことがあれば、些細なことでも結構ですのでドクターやスタッフに相談ください。

 

最近は、ネットの情報に振り回され、キリキリしておられる患者さんをたくさん見かけます。

しかし、ネット上にある情報は正しいものばかりでなく、個人が思い込みで書いていることも多々あります。患者さんお一人おひとりで状況は違いますし、他の方の数値や体験談がそのまま自分にもあてはまるとは限りません。

情報を鵜呑みにして思い詰めすぎると、心身にストレスがかかるので、なかなか成果が出ないということにもなりかねません。

 

医学的なサポートは、私たちスタッフが全力でさせていただきますから、ネットの情報に一喜一憂せず、大らかな気持ちで治療を受けていただければと思います。夢を叶えるために、私たちと一緒にがんばっていきましょう。
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取材・文/渡邉優希

施設名 池下レディースクリニック吉祥寺
URL http://www.ikeshita-clinic.com/kichijyoji/

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