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治療最前線の名医に聞く! 不妊治療Q&A

タイミング・ステップアップ

2015.11.20培養士の腕が、妊娠率を左右する? 培養士ってどんな仕事なの?

答えてくださった先生は・・・
大島隆史先生
大島クリニック院長/医学博士
おおしま・たかふみ 1982年3月、自治医科大学卒業 。1982年4月、新潟大学医学部産科婦人科教室入局。1992年新潟大学医学部に於いて医学博士号を授与される。テーマは「実験的糖尿病ラット非妊娠時および妊娠時子宮の生理学的研究」。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、1999年、産科婦人科大島クリニックを開設、院長に就任。日本生殖医学会認定・生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定・産婦人科専門医。女性の生涯をトータルでサポートしているが、中でも不妊治療には力を入れており、不妊相談室、男性不妊相談室、不妊カウンセラー相談室、胚培養士相談室を実施するなど、患者さんに気軽に相談してもらえる体制を整えている。
大野 ちなみ/胚培養士
臨床検査技師の専門学校を卒業後、2011年に大島クリニック入職。胚培養士としての経験はまもなく5年目を迎える。
2014年日本臨床エンブリオロジスト学会認定 臨床エンブリオロジスト取得
2014年日本卵子学会 生殖補助医療胚培養士取得
医師と培養士は二人三脚の関係。卵を大切に育み、妊娠へとつなぐ

不妊治療を行う医療機関では、患者さんからお預かりした、卵子や精子、受精卵のお世話をする“胚培養士”(通称・培養士)と呼ばれるスタッフが働いています。人工授精を行う際には、精液の洗浄をして精子の濃縮を行ったり、体外受精では受精とその後の胚培養をするなど、まさに生命が生まれるその瞬間に立ち会います。胚培養士とはどのような仕事で、どのように育成されるのか。大島院長と胚培養士の大野さんにお話しを伺いました。
※本文中では、通称名である「培養士」を使用しています。

不妊治療は、医師、培養士、患者さんが力を合わせて

受精卵(胚)の状態について患者さんに直接、培養士がご説明することも。少しでも妊娠率を高められるよう、院長とは密にやりとりを

-- 培養士さんは毎日、どのようなお仕事をしているのですか?

大野 培養士はひと言でいうと、卵子と精子、受精卵をお預かりしてお世話をする仕事です。
体外受精では、患者さんから採卵された卵胞液を院長から受け取り、顕微鏡下で卵子を見つけ出します。その卵子はすぐにインキュベーターと呼ばれる“卵の保育器”に入れて大切に培養します。インキュベーターの中は人の卵管の環境に似せられており、培養士は、細心の注意を払って温度などの管理を行っています。
一方、採精された精液は“調整”と呼ばれる操作を行います。精液中の精子には、あまり動きが良くないものや、動き方がおかしいもの、形がいびつなものなどがあります。こうした精子は取り除き、運動率が良くて形が良い精子のみを回収します。

これらのステップが終わったら、いよいよ受精の操作に入ります。卵子と精子を同じ容器に入れて、精子が卵子に向かって泳ぎ受精が成立するのを待ちます(顕微授精の場合は、顕微鏡を覗きながら、卵子に一つの精子を直接注入します)。翌朝、受精を確認したら、受精卵をインキュベーターに入れて、毎日注意深く成長を見守っていきます。
また当クリニックでは、胚移植を行う前には培養士が直接、患者さんに説明を行います。移植する受精卵(胚)について、胚のお写真と卵のグレード表を照らし合わせながら、状態やグレードなどについてご説明をします。

こうした一連の仕事の合間には、専門誌を読んで勉強をしたり、手技のトレーニングをしたり、機械のメンテナンスなどをしています。

-- 培養士さんは、どのような基準で採用されているのでしょうか。また育成はどのように行われていますか?

院長 培養士という仕事は、何より強い責任感とやる気が必要ですから、情熱を持った若いフレッシュな人を採用しています。育成は、基本的に先輩が後輩を教えるというOJT(オンザジョブトレーニング)形式です。

大野 入職後は、仕事内容について説明を受けた後、まず「ダブルチェック」の大切さを学びます。培養士が扱うのは人の卵子と精子なので、取り違えなどの間違いは絶対に許されません。そのため、2人で操作の確認をするダブルチェックを徹底的にたたき込まれます。

そして次に、精子のカウントや調整などのトレーニングを積みます。精子の扱いに慣れてきたら、いよいよ卵子を扱うための訓練を始めます。もちろん最初は、生きている卵子や胚は触らせてもらえません。廃棄卵(死んでしまった卵子)を使って、気が遠くなるほどのトレーニングを繰り返します。先輩がチェックをして、“そろそろ任せても大丈夫だな”と判断されれば、本番の操作をします。もちろん院長にも、技術が一定レベルに到達しているかのチェックを受けます。

院長 だいたい培養士が一人前になるまでには、1年から2年くらいの期間が必要です。どのスタッフも、ある一定レベルには必ず到達しますが、仕事への情熱や勉強量、患者さんの卵子や精子をお預かりしているという姿勢の強さなどにより、力量に差がついていきます。
大野さんは、学会誌を読んで臨床的に応用できないかと常に考えていたり、院外で開催される技術トレーニングにも積極的に参加したりしていますので、成長が早いですよね。仕事に対する姿勢が真摯で、他の培養士のお手本であり、リーダー的な役割を担ってくれていますよ。
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-- 院長と培養士さんの連携は、治療の成果を高める上でとても重要だと思いますが、どのように意思疎通を図っているのでしょうか

院長 採卵した卵を無事に受精させ、培養し、患者さんの子宮に移植するためには培養士の力が欠かせません。ですから、培養士とは週に何度かミーティングを行いコミュニケーションをとっています。採卵や胚移植の方針についても、データをみながら話し合うことが多いですね。また採卵後に、体外受精でいくか、顕微授精をするかもよく話し合います。

ある患者さんは、他院で2〜3年顕微授精にトライされていたんですが、なかなか妊娠せず、当クリニックを受診されました。うちのクリニックでも最初は顕微授精を行ったのですが、うまくいかず、培養士とも相談して思い切って体外受精に挑戦してみることになりました。
そうしたら1度でみごとに妊娠。出産まで至ることができました。うちの培養士の情熱が、卵に通じたのかな?と思いますよ。スタッフみんなが「絶対に妊娠してほしい」と一丸となって取り組んでくれましたから。もちろん、患者さん自身のがんばりも一番大きかったと思います。

不妊治療、とりわけ体外受精においては、患者さん、医師、培養士、それぞれの力が3分の1ずつ合わさって、妊娠まで到達するのかもしれません。

-- 体外受精で妊娠まで至るには、排卵誘発の方法が的確で、良い卵が採れることも重要なのでは?と感じますが・・・

院長 そうですね。卵子の数が多く採れると、良好胚が得られる可能性も高くなりますから、その時々の卵巣などの状態にあわせて、きめ細かく排卵誘発の方法を変えてきます。患者さんの状態によっては、毎月、誘発方法を変えることもあります。
アンタゴニスト法があわなければショート法(アゴニスト)に、ショート法が向かなければアンタゴニスト法に変えます。また、ロング法(アゴニスト)や、クロミッドによる低刺激法も使い分けていきます。

しかし受精卵のグレードが低いからといって、絶対に妊娠が難しいということではありません。例えば、7日目で4CB、あるいは4CCというあまり状態が良くない胚であっても、妊娠された方はいらっしゃいます。統計上の確率はゼロでも妊娠に至ることはありますので、凍結と移植をするかどうかは、最終的には患者さんと相談してお決めいただくようにしています。

-- 最後に、患者さんへのメッセージをお願いします

大野 不妊治療を考えておられる場合は、できるだけご夫婦で足並みを揃えていらしてほしいですね。不妊の原因は男女半々ですから、ご主人さまにもいらしていただくことで、早い段階で原因が分かるかもしれません。なるべく、ご夫婦でのご受診をお待ちしています。

院長 私が不妊治療を志したのは、研修医時代の体験からです。その当時、10年間不妊で悩んでおられた女性が、人工授精で妊娠されました。その方の陣痛が始まったときは真夜中で、呼び出された私は、福島と新潟の県境にある病院に山あいの夜道を熊よけの鈴を鳴らしながら徒歩で駆けつけたんですよね。
このとき“不妊治療ってすごくやりがいがあるな。10年も悩んでいた方が赤ちゃんを抱けるなんてすごい!”と涙ながらに感動したんですよね。このときの感動が、今も私の心の中に原点として息づいています。

不妊治療では、年齢というものが治療の成否を分ける大きなファクターになりますが、42歳までなら、かなりの確率で妊娠に至ることができると考えます。43歳の患者さんでも採卵回数は多くなりますが、妊娠され出産まで可能です。
不妊治療のクリニックを受診されることにためらいがあるかもしれませんが、まずは「不妊相談室」などにお越しいただいて、些細なことでも結構ですので、お気軽にご相談いただければと思います。いろいろな情報を得ていただくことで、きっと明るい未来を感じていただけるはずです。みなさまの夢を叶えるために、私たちが全力でお手伝いをさせていただきます。

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取材・文/渡邉優希

施設名 医療法人社団 大島クリニック
URL http://www.oshima-cl.jp/

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