トップページ > 女性と子どもの健康コーナー ここからげんき > 健康カレンダー > 寒さに強い体をつくる 漢方で「冷え」を解消(1)
毎日が忙しく健康に気が回らない方に役立つ簡単な健康維持の情報や、いつも健康に気を使っている方でも知らなかった健康のコツなど、生活の中で役立つ健康情報をご紹介します!
監修:古賀実芳 先生
こが・みほう 東京慈恵会医科大学総合診療部漢方外来担当医。日本東洋医学会専門医。東京慈恵会医科大学医学部卒業。神奈川リハビリテーション病院東洋医学科、日本医科大学東洋医学科勤務などを経て、現職。
寒がりで冬が苦手。暖房をつけてもなかなか温まらない。手足の先がしびれるように冷たい。こんなときは漢方薬が頼りになります。ポイントは冷えのタイプに合う薬を使うこと。あなたはどのタイプ?
漢方薬は一人ひとりの心身の状態に合わせて薬(処方)を選びます。冷えの治療も、冷え方やその背景にある体質を見極めて、個々に合う薬を使います。この見極め、すなわち診断こそが専門家の腕の見せどころ。体の状態が変わったら、それに応じて薬も替えます。
いわゆる体質改善を目的に長期間飲んだほうがいい薬もありますが、急に起きた症状などは、比較的短期間で十分な効果が得られる場合も少なくありません。
漢方薬の中には安産をサポートする「安胎薬」や、産前産後の不調や子どもの夜泣きに使われる薬もあるので、虚弱な人も安心して使えます。西洋医学の薬を服用中に、副作用として出てきた冷えを和らげる目的で使うこともできます。
女性の冷えは大きく2つに分けられます。1つは虚弱体質による冷えです。平熱が35℃台と低く、体が芯(しん)から冷えて風邪を引きやすかったり、疲れやすかったりします。これは、体を温める熱や栄養分となる血をつくる内臓の働きが弱いからです。月経が遅れる、月経血の色が薄く、量が少ないなどの傾向があります。
このタイプに合う代表的な漢方薬は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)。血を補いながら水と血の巡りを良くして体を温めます。下半身は冷えるのに顔はほてるという人には温経湯(うんけいとう)。月経不順を改善する働きもあります。
この他、胃腸を温める安中散(あんちゅうさん)や大建中湯(だいけんちゅうとう)が合う人もいます。
不足した力を補いながら、じっくりと温めていく必要があるため、いずれの薬を使うにしても服用期間は若干長くなります。
もう1つは、不安や緊張感が強いために冷えが出てくるタイプです。手足の先に冷えを感じる“末端冷え性”が特徴。仕事を始めたばかりだったり、生活環境が変わったりといったストレスの多い状況で出てきます。
熱をつくる力はあっても、体がコチコチに固くなっているために、隅々までエネルギーや血を巡らせることができなくなっている状態です。月経周期が乱れがちで、月経の1週間ほど前から冷えが強くなる傾向があります。
心を伸びやかにする加味逍遙散(かみしょうようさん)や、血行を良くする桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がよく効きます。イライラ感が強い場合はまず加味逍遙散。心が落ち着き、緊張からくる肩こりなども比較的短期間に解消できます。
のぼせと冷えが同居する、熱のアンバランスがある場合は、桂枝茯苓丸や虚弱タイプに使われる温経湯。もともと胃腸虚弱があって寒がる人が、ストレスで冷えている場合は、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が用いられることもあります。