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20~30代なら乳がん検診が不要な場合も…。
乳がん検診の正しい受け方を教えて!(1)

監修:斎藤 博 先生

斎藤 博 先生

さいとう・ひろし 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診研究部長。1978年、群馬大学医学部卒業。弘前大学助教授を経て、2004年より国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長、2008年より現職。厚生労働省「がん検診に関する検討会」委員(2003~08)、日本対がん協会評議員(2006~)。専門分野はがん検診の有効性評価及び精度管理。1996年河北文化賞、2002年朝日がん大賞受。著書に『がん検診は誤解だらけ 何を選んでどう受ける』(NHK出版)など。国内外をリードする検診研究の第一人者。

芸能人や著名人が乳がんにかかるたび、「検診に行ってください!」と呼びかけます。しかし、検診を受ける必要のない人が検診を受けることでの“不利益”があることは、ほとんど知られていません。科学的な裏付け(エビデンス)に基づいた検診の受け方とはどのようなものか。乳がん検診の正しい受け方について、検診研究の国内第一人者の先生に伺います。

若い人の乳がんが増えている印象があるけど、本当はどうなの?

34歳以下の罹患率は非常に低く、若年層の乳がんが増えているわけではない

若い著名人が乳がんにかかるのを目にするたび、“若い人の乳がんが増えているのかも”と感じるかもしれません。しかし年代別の罹患率(2013年)*を見てみると、人口10万人対で、20-24歳では0.6、25-29歳では9.0、30-34歳では24.8、35-39歳では60.1と決して多いわけではなく、経年で見ても34歳以下の若い世代では微増に留まっている(35-39歳はやや増えている)ことがわかります。
反対に40代以降は、40-44歳では132.2、45-49歳では2113と急激に罹患率が上昇。2003年度と2013年度のグラフを比べてみるとわかるように、40代以降は経年でも罹患率が大幅に増えているのがわかります。

*国立がん研究センターがん対策情報サービス「がん登録・統計」より引用

年齢階級別罹患率(全国推計値)乳房(女性)

若い世代の乳がんは増えてないないよ

若い頃から検診を受けること=いいことって思っていたけど、違うの?

実は30代の人が検診を受けることで
死亡するリスクが下がるという科学的な根拠はない

乳がん検診の目的は、乳がんによる死亡するリスクを下げることです。しかし30代に検診を行うことが死亡リスクを下げるという科学的根拠はないのです。

このあと説明しますが、検診を受けるという行為には、「利益」と「不利益」があります。30代には、死亡リスクを下げるという「利益」がないのに、「不利益」ばかりがついてくるという現実があります。

乳がん検診には、利益だけでなく不利益もある

ではいったい、乳がん検診を受けることでの「利益」と「不利益」にはどんなものがあるのでしょうか。

◆利益(メリット)

  • 乳がんによる死亡率の減少、個人においては乳がんで亡くなるリスクの減少
    ※必要な人が必要な検査を受けた場合
  • 病気ではないという安心感を得られる

◆不利益(デメリット)

  • 偽陽性の可能性。これは受診者の8%程度の人に生じる可能性がある。
  • 「がんの可能性あり」と診断された場合の不安による精神的な負担。
    これは受診者の8%程度の人に生じる可能性がある。
  • 必要のない精密検査や治療を受ける“過剰診断”の恐れがある
  • 被曝(マンモグラフィ検査)による将来の発がんリスクのアップ
    ※このリスクは微々たるものではあるが、受けなければ生じないリスクである。

年齢が若ければ若いほど、乳がん検診を
受けることでの“不利益”が利益より大きい

冒頭のように20~30代のような罹患率が低い人や、死亡リスクを下げるという科学的根拠がない人が検診を受けることで、偽陽性や精神的な負担、過剰診断などの不利益が、利益より上回ってしまうことが多いのです。

言ってみれば、“がんで亡くなるリスクが減らせる”と書かれたアタリくじが入ってないのに、不利益ばかりのくじをひくようなものかもしれません。

偽陽性・精神的負担・過剰診断

■偽陽性とは

乳がん検診を受けると一定の割合で「乳がんの可能性あり」と判定が出ます。しかし実際に乳がんだと診断をされるのは、40代でもわずか0.2~0.3%程度。受診者1000人中、仮に85人に「がんの可能性あり」と判定が出ても、80人強はがんではない。つまりそれら80人以上の人は“偽陽性”ということになります。もともと乳がんの罹患率が低い20~30代では、偽陽性の割合はさらに高くなります。

■精神的負担とは

さらには、「がんの可能性あり」と判定されると、胸に針を刺して組織を採取する生検が行われます。その負担に加え、精密検査の結果が出るまでには2週間程度かかるので、結果を待つ間には“自分はがんかもしれない”という著しい“精神的な負担”が生じます。
精神的な負担だけでも厳しいものがありますが、その陰には「がんの疑いあり」とわかったことで、例えば家事ができなくなるほどの身体症状をきたし、家庭生活に大きな支障が出るケースもあります。しかしその実態はまったく把握されておらず、メディアによって報じられることもありません。

■過剰診断とは

また乳がんの中には、時間が経過しても進行しないタイプのがんがあります。しかしこういうがんも普通のがんとは決して区別がつきません。検診を行った場合にのみ見つかり、検診を受けなければ一生気が付かずにすみ、それで困ることもないがんです。過剰診断がんと言います。検診の最大の不利益(デメリット)とされています。手術や抗がん剤などの治療は行われるので、命に関わらないのに治療が行われるという“過剰治療”の状態になります。
よく「早く見つかったので、治療が軽く済んでよかったね」と言われることがありますが、本来、治療をしなくてもいいものだったかもしれないのです。早く見つかることが不利益になる場合があることを、心の隅にとどめておいてください。

早く見つかることが不利益になることもあるんだ…

検診を受ける利益のほうが不利益より大きいのは、どんな人?

検診の対象は乳がんの好発年齢であり、科学的根拠のある40代以上の人。
20~30代の人については家族歴が濃厚にある場合には検診ではなく、病院(乳腺専門外来など)で相談を

では、どんな人が検診を受けた方がいいか=不利益より利益が上回るかというと、死亡率が減らせるという科学的根拠のある40歳以上の人です。40代以上では罹患率が急激に上昇します。
そしてもう一つの対象は、20~30代で、家族に乳がんにかかった人が多くいる人(家族歴のある人)です。特に近親者に3人以上乳がんにかかった人がいる場合です。次項で説明しますが、20~30代の人は検診ではなく、マンモグラフィなどが必要かどうか乳腺外来などに相談して判断してもらってください。(検査の必要が無い場合もあります)

次のページでは、家族歴の判断の仕方と、正しい検診の受け方などについてご紹介します!

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